EAT PLAY ART

Monday, January 7, 2019

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新しい年が明けましたが、去年10月に行った何十年ぶりかのNYの旅行記を。

ローティーンの頃に行ったきり機会に恵まれなかったNYですが、ミヅマの新しいスペースがオープンするということでお祝いに駆けつけました。

欧州やアジアであれば勝手知ったるといった感じだけど、久しぶりのアメリカ本土、しかもNY。
行く前妙にナーバスになってしまい、欧州在住の友人に「NYアウェー感がすごい」とラインしたところ、「わかるわ〜〜」と、共感を得た笑
12時間かかるパリよりさらに何時間も遠くて、物理的にも精神的にもアウェーなNY

実際JFK空港着いてすぐ、アウェー感は現実となって私を襲うことになります。
ラゲージアウトで荷物を待っていたところ、目の前に私のリモワちゃんが流れて来るあと2mというところで、メガネのアジア人男性(非日本人)がそれを掠め取り、サーッと移動して行くではないですか。
慌てて「ねえ、私の荷物だよ!」と英語で言いながら追いかけると、その男は一瞬ちらっと振り返り、何も言わず荷物をその場に置いて小走りでいなくなった。
自分のカバンと間違えてたという様子でもなく、私は着いて早々全てを失うところだった。。早速アウェーの洗礼です。

気を取り直し、タクシーでホテルへ向かう。
土地勘も何もない一人旅なので、知人からの推薦もあってミッドタウンにある某姉妹で有名なホテルを今回のお宿に選んだのだけど、これが後々の悲劇を生みます笑

当日夜は現地金融で働くアメリカ人の友人がノマドホテルでのディナーを予約してくれていたので、ドレス着て、シャネルのピアスつけて、ジミーチュウのブーツ履いて、ジバンシーのバッグ持って、つまりおめかしをして出かけた。
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オシャレでご飯が美味しいと有名な予約が取れない星付きレストランと聞いていたからワクワクしながら行ったけど、感想はいたって普通…他の日本人のレビューを読んでも辛口評価。
看板メニューのフォアグラはくどいばかりで残してしまった。スイーツも甘すぎて以下同文。ワインはめちゃ高いボトルを頼んだから、美味しかった(当たり前)
インテリアも欧州の重厚で歴史あるものと比較してしまえば、ハリボテ感満載で安っぽく感じた。
なかなか座れないらしい、暖炉のあるお部屋の暖炉の横の席だったのだけど、その偽暖炉には偽のろうそくが豆電球でゆらゆら演出されていた。
星のついているレストランでもこんな感じかぁと、アメリカの食事の質を改めて思い知らされた初日の夜。
でもお店を用意してくれた友人には感謝でいっぱいだし、おしゃべりしながらのディナーはもちろん楽しかった。その後タイムズスクエア周辺を二人で散歩して歩いたのもとても気持ちが良かった。

エンパイアステートビルディングはハロウィン仕様のオレンジ色のライトアップ
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2日目は終日予定がなかったから一人で美術館巡りとお買い物。
MOMAは最高だった。なにがって、コレクションが!
マグリットの「恋人たち」もここにある。
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ホイットニーも、グッゲンハイムも、展示がかなりつまらなかった。これにはとてもがっかりした。
アートの本場であるなら、こちらが腰が抜けるほどすごいショーを見せつけて欲しかった。
なんか、景気の悪い国の展示みたいに退屈だった。

グッゲンハイムで展示を見終わってエントランス付近にいた時、来たばかりという感じのアメリカ人のおじいさんに「ねえ、見る価値ある?25ドル払う価値あった?」と話しかけられたので「正直、ないと思います」と言ってしまった笑
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グラウンド・ゼロはさすがにモニュメントとして素晴らしかった。
モニュメントはドイツ語でDenkmal(デンクマール)という。denk(考える)mal(一度)、つまり一度考えるという意味がある。
denkをdenkenという動詞の命令形と考えれば「再考しろ」とも捉えられる。
ドイツの近代史と結びつけて思い起こしては、よくできた言葉だなぁといつも感心する

ご遺族の方のものなのか、所々お花がこうして名前の上に刺さっていた
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今回NYに行くにあたり絶対に行きたかったお店がありました。
それはJohn Derianのお店。
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5月にいったベルリンではキューンケラミックで念願のカップやら陶器のトランプやらを買うことができたが、ここでも3枚ほどインテリア用のお皿を購入。

これは薔薇から生まれた薔薇太郎。きゃわいい。
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トランプ模様に弱い私
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目のお皿はアスティエ・ド・ヴィラットとジョン・デリアンのコラボレーション。奥に見えるのは、氏の買い集めたペーパーのコレクションを掲載した画集 @自宅のリビング
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三日目。夕方からお邪魔したミヅマのグランドオープニングは盛況でした
オープニング展をしている天野喜孝さんや、篠原有司男さんにもお会いできて嬉しかったです♡
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ところで某姉妹で有名な今回のホテルの件ですが、何が悲劇だったかと言いますと、通されたお部屋に問題がありました。
お部屋自体はモダンで、無加工でも今にもちょっとしたロマンチックホラー始まりそうないい雰囲気だったのだけど。
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高層階のエレベーターから離れたほぼ一番奥の部屋だったのですが、着いた時から24時間ずーっと黒スーツで強面のガタイのいいアジア人のおじさんが常時2人以上、多い時で8人、私の部屋の扉の横(つまり廊下)に椅子を置いて待機していたのです。
なにこれ全くリラックスできない笑
夜中だろうと朝方だろうと話し声が私の部屋にも響き、出入りのたびにジロジロ見られ、辛抱堪らなくなったある日の夜中とうとう「いい加減静かにしてっ!今何時だと思ってるの!!」と怒ってしまった。ソーリーソーリーと少し申し訳なさそうにして、その日は静かになったのですが、相変わらず24時間体制でおじさんたちが部屋の横にいる状態は変わらず。
私はてっきり、その廊下のどんつきにあるペントハウス(私の隣の部屋)に中国の会社でも入っていて、おじさんたちはその従業員で、外で時間を潰していると思い込んでいたのですが、アメリカ人の友人に事情を話すと驚いて様子を見にきてくれて「フロントに相談するべきだ」と。
どうやらペントハウスにはどこかのアジアの国の政治家が泊まっていて、黒服たちはSPだった模様。
銃を持っていたかもしれない彼らに、それとは知らず怒った私の命知らずさったら・・・中国旅行客だらけのホテルだったから、なんなら旅行代理店のおじさんたちだとばかり笑(超のんき)
一応高級ホテルなのに一人旅の女性客をこんなプライバシーのない部屋に通すなんて、と友人がフロントに部屋の交換を掛け合ってくれたのだけど、同じグレードに空き部屋がないから無理の一点張り。4泊で20万円以上支払っているのにずいぶんな対応で、怒った友人は今すぐチェックアウトしてうちにおいでと言ってくれて、返金対応など全て交渉も済ませてくれたおかげで、無事に最後の夜を過ごすことができました。
本件の対応に当たったサブマネージャーはマネージャーは不在とばかり言い、アーリーチェックアウトはできないと繰り返すばかりだったけど、某姉妹で有名なホテルの本部に電話したら、ミッドタウン店の非礼を詫び、サブマネージャーの再教育を約束し、アーリーチェックアウトもホテルの規定上何も問題ない、必ず返金すると言ってくれて、やはりきちんと責任者と話をするのって大事なことと再確認。

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ハワイとカルフォルニアの記憶しか鮮明でない私にとってアメリカってもっとおおらかで楽しいイメージだったのだけど、今回のNYでかなり印象が変わったなぁ。
文化的な側面で言えば魅力があまりなく、あくまで経済の街。それ以上の何ものでもなかった。
現地に住むアーティストの友人曰く、最近どこも展覧会がつまらないそう。勢いを失いつつあるNY。
物やお店は大抵なんでもあった。日本には来る気配もないパリのお店なども、ローカライズしてガンガン出店していた。まさに、資本の場所。
パリの大好きなジェラード屋のアモリノは、ここNYでは大味で巨大でもはや薔薇の形を失い、店員がしつこくさらにマカロンを載せることをオススメして来た。(パリのアモリノ、私が知る限りそんなハイカロリーカスタマイズはない。)
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大都会とも思わなかった。洗練には遠く、ごちゃごちゃしている。
草間さんの本では日本はアメリカに30年遅れていると書かれていたけど、今のNYならそうは全く感じなかった。
ニューヨーカーは都会人らしいといえばそうなのだろうけど、せっかちで横柄に思えた。

何より歴史がなくて、全てにおいて物足りなかった。
そこがアメリカの強みでもあるのだろうけど、例えばアート一つ取っても、お金の力で集めて来た欧州の美術品以外のアメリカンアートは良くも悪くもペラペラだった。
欧州時代も感じていたが、アメリカ人にとってアメリカは世界の中心であり、すべてで、他国への関心が非常に薄い。よそを知らなくて困ることもないからだろうし、周りも知らないからその状態に疑問を持つこともない。
日本はいつも心に鎖国を…みたいなところあるけど、外の世界に目を向けている人がたくさんいるし、文化もたくさん入って来ている。敬意も持っている。
それはとても素晴らしいこと。
NYはどれだけすごいところなんだろう、最高のアートや文化があって私を打ちのめしてくれるに違いない、と極東の東女はお上りさん然とドキドキして乗り込んだのですが、ナーバスになる必要はどこにもありませんでした。
それならやはり去年ドイツ方面を回って帰国した時の方が、しばらく自分が何をしたらいいのかわからなくなるほど、新旧本物のアートに己の若輩ぶりを思い知らされて打ちのめされていた。帰国の途に着く飛行機内で何度も「帰ったら何を描いたらいいかわからない」と同行者に漏らしたほどだ。
NYやっぱりすごい〜!大好き!私もがんばろっ☆ってなる予定で行ったのに、肩透かしを食らった。

しかしNYが経済の街である限りアートも運命共同体。現在アートを志す全ての人間においてファイナルディスティネーションであることに変わりはありません。
なんだかんだ書いたけど、きっとまたすぐに行くと思います♡
最後に、まるでマグリットがミッドタウンの街角に彼の作品モチーフを置き忘れたかのような光景を残して、主観に満ち偏った視座からとなってしまった旅行記を締めたいと思います。
見事な蝙蝠傘、時空を超えてマグリットの足跡を見たような気分になった
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Berlin,Weimar,Leipzig,Dresden,Prague, Vienna and Krems 2018 #6

Wednesday, December 5, 2018

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インスタグラムの方をチェックしてくださっている方にはどれだけ周回遅れの内容なんだという感じなのですが、初夏のバケーションのダイアリーを続けます笑

6都市目、ウイーン。
このあと記すクレムスにレジデンスで一ヶ月滞在したのは2006年のこと。その際も週一でウイーンに通っていたし、家族旅行で来たこともあるので、遠い昔とはいえ慣れ親しんだ都市です。
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ウイーンのいいところは、コンパクトなところ。見るべきものが、ほとんどまとまって存在しています。
街の人がドイツ人ほどキツくないところ。
観光客慣れしているところ。
あと、もちろん、非常に文化的に優れているところ。
食べ物一つとっても、やはり宮廷文化が栄えた場所は華やかで、砂を嚙むように味気ないベルリンに住んでいた私は、当時ウイーンに来ると呼吸が楽になる思いでした。
「Total anderes aus deutsch!(ドイツとは全然違うわ!)」という社交辞令をよく使ったものです笑 それを聞いたオーストリア人の頬の上がる感じは皆一様でした。
実際、使用している言語も一緒のお隣の国だけど、街の持つ成熟した柔らかい空気感や、ハプスブルグ家ゆかりの高潔な美しさなど、ドイツにはない要素がいっぱい。

ウイーンの定宿はホテルザッハー。そう、あのザッハートルテ発祥でウイーンでも歴史あるファイブスターホテル。
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ここは立地がとにかく最高で、リングの内側、オペラ座の真裏、観光の中心地コールマルクト通り入り口などなど、とにかく便利。
お部屋もいろいろなタイプがあって、どの部屋も本当に美しい。
旅の最後はスイートルーム。
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すごく広いし、窓からの眺めもデューラーのウサギの絵を持っていることで有名なアルベルティーナが美しいです。
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ザッハーは朝食が最高。
お値段はかなりするけど、朝からザッハートルテ食べ放題!笑
美男美女のホテルスタッフが本当に丁寧に接してくれて、優雅なブレックファースト体験ができます。
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子供用のコーナーもすごく可愛い!
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ブルーチーズが大好きな私だけど、ここの朝食で出たものが過去最高に美味しかった…!あんな美味しいチーズがこの世にあるなんて…!!
各テーブルの生花もヨーロッパのお花とアレンジといった感じで、本当に素敵じゃないですか?
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右を見ても左を見てもうっとりのホテルザッハー。
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観光に話を戻しましょう。
とにかくあまりにも何度も来たことのある街なので、宮殿等の主要な観光地は割愛し、美術館などをじっくり回りました。

実はこの欧州旅行の最大の目的は、ウイーン美術史美術館のクリムトの壁画に近づける階段「Stairway to Klimt」でした。
クリムト没後100年の記念事業で、それまで何十メートルも離れた対岸の廊下から眺めるしかなかった美しいクリムトの壁画を、間近で見れる滅多にないチャンスでした。
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何度も訪れた美術史美術館、その中でも天井近くに描かれたクリムトの壁画はとても好きな作品。
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接近して眺めると思っていたより筆致は粗めで、絵の具も彼の普段のタブローに比べたら薄い。場所が場所なだけに、速描きだったことが伺えます。
思う存分壁画を堪能した後は、常設展示室へ

世界三大美術館に数えられるウイーン美術史美術館、そのコレクションの質はもちろんトップオブトップ。
フェルメール「画家のアトリエ」、ブリューゲル「バベルの塔」「農民の結婚式」、ベラスケス「王妃マルゲリータ」などなど、人類の宝物のような絵画が山のようにあります。

私がいた頃にはなかった試みなのだけど、最近の美術史美術館は、これらのコレクションといろいろな企画展を混ぜて展示する試みをしているようで、今回は「The Shape of Time」という現代美術とオールドマスターズの展示でした。
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Historisches Museumの文字通り「ヒストーリッシェス(=歴史的)」な場所においては意欲的な試みではあるのだけど、やや保守的な内容で、現代の作家は完全に評価が安定したビッグネームたち。面白いかといったら、正直疑問な感じ…?
下はブリューゲルの名作近くのピーター・ドイグ
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正直せっかく美術史美術館に来ているのだから、一枚でも多く、普通にオールドマスターズが見たい笑
行きの飛行機の中で観た「グランドブダペストホテル」のウェス・アンダーソン監督がキュレーションした展示も最近あったみたいですね。どんな感じに仕上がったのかしら。
なんにせよ、この度最大の目的であるクリムト壁画を間近で観られたのだから、よしとします。

お近くの、レオポルドミュージアムでは常設の素晴らしいエゴン・シーレやクリムトの展示以外に、上階でとある女性個人コレクターのコレクション展がやっていました。
私は存じあげなかったのだけど、このハイディ・ホルテンさん何者でしょう?!
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サイト読んだら、初めてオープンに見せる展覧会って書いてあるけど本当?!?!?!ものすごーーーーーーーーーーーーーいコレクションだった!!今までこれを基本個人で楽しんでいたということ?!信じられないクオリティ。
初期ルシアン・フロイトから、フランシス・ベーコンの傑作、シーレなどの世紀末、モダン一通り、そして奈良美智さんに到るまで、とんでもない量と質の高いコレクション…そしてゴージャスで美しいご本人に到るまで、世界にはとんでもない人がいるもんだと思わされる、まさに展覧会名「WOW!」そのもの笑
私もいつか彼女のようなゴージャスな女性になりたいものです。

小さいけれど存在感の強い初期フロイトのドローイング。ジョン・カリンとかもなのだけど、初期は驚くほどに形の追い方が独特。
そして、生で見ると後れ毛を異様にしつこく追って一本一本描いているあたりに「やはりフロイトはこうでいてくれなくては!」と我が意を得たり。
頭蓋骨に対して顔のパーツが大きすぎることも含め、自分の関心の大きい部分を強く描き出してしまう感じは、幼児の感性にかなり近い
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レオポルドミュージアムは現代的な建築の美術館なのだけど、ふと気がつくと白壁に絵がかけてあるかのような窓の風景。
窓枠右側にリヒターのオイルがあるのだけど、リアル風景画に押されてしまっている
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この企画展のカタログは本当に欲しかったのだけど、大きくてすごく重たくて泣く泣く断念。。
長旅なのでカタログ類ガンガン買えないのがとても残念。
休憩に入ったここのカフェは何やら日本風のメニューで、ウイーン名物シュニッツェルの乗ったカツカレーなど、ちょっとホッとする味わいでオススメです。

二週間の旅の最後にウイーンから電車を乗り継ぎ、世界遺産であるヴァッハウ渓谷を船でくだり、思い出の地クレムスにショートトリップしたのですが、せっかくなのでそのことは#7で書くことにしましょう。

先日ようやく120号の新作を描き終えて少しだけ気持ちに余裕があったからダイアリーを久々に書くことができました。
流石に#7は年内には書き上げたい…10月に行ったNYについても書かなきゃいけないし、来週はバースデーで海外行くし、時間見つけて頑張ります笑

白の美術館

Wednesday, September 26, 2018

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先週からテレビ朝日で放送されている番組「白の美術館」に出演しています^^
すでにとても反響が大きく、今後の放送も楽しみ!
番組内では今までにないアプローチで作品を作っているのでぜひ観てくださいね。

関東は今夜23:10~23:15テレビ朝日にて。報道ステーションとかりそめ天国の間ですよ〜
名古屋方面はメーテレで明日木曜日深夜0:15~0:20
大阪方面はABCにて明後日金曜日23:10~23:17

BS朝日では10/15(月)にたっぷり30分間もっと濃い内容で出演します。

番組が終わった後すぐにチャンネルを変えずに提供のバックグラウンドの映像にもご注目くださいね♡

Berlin,Weimar,Leipzig,Dresden,Prague, Vienna and Krems 2018 #5

Thursday, September 13, 2018

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さあ、プラハです。
生まれて初めてのチェコ!初めてのプラハ!
今回唯一の非ドイツ語圏。
英語ドイツ語フランス語はまずまず、ハングルも最近少々読めるようになった私にとってスラヴ系言語は完全アウェーなので、全く言葉のわからない国に行くワクワク感いっぱいでの入国。
プラハ駅から中心地にあるホテルまでは歩いて向かう。
何年も一緒に旅をしている戦友のリモワちゃんもプラハの石畳に大苦戦だったけど、どうにかホテルに到着。
通してもらった部屋がノンスモーキングのはずがタバコ臭く、その対応に当たったホテルスタッフのお兄さん含め、チェコの人たちは感じがよい。
ひとまず荷物を降ろしホテル横のショッピングモール内で簡単な夕食を食べた時も、すごく流暢な英語でドリンクをサービスしてくれたり、観光が大きな収入源であるプラハの人たちの、外国人に接する際の前向きな態度に嬉しくなった。

翌日は朝からたくさん食べてエネルギー補給(トプ画参照)
何食べても美味しいの。
何食べても美味しくないドイツの隣の国とは思えない!!
甘いケーキも、なぜか人気でモーニングビュッフェにたくさん並ぶお寿司も、乳製品も全部全部美味しい。
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ご飯の美味しい国から来ている私たち日本人にとって、食が豊かであることは本当に重要…!

お腹もいっぱいになったところで観光へ向かう。
ホテルのすぐ裏は歴史的建造物の火薬庫で、そこを抜けると近くにBlack Madonnaが!
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日本語だと「黒い聖母の家」と呼ばれるこの建築、世界でも数少ないキュビズム建築という摩訶不思議な代物で、英語圏ではブラックマドンナと呼ばれ長く私も憧れてきたものでした。
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建物には実際に黒い顔のマリアとキリストの彫刻が設置されています
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ヨーロッパによく見られる、こんな感じで建物に聖人像が置かれているの本当に大好き。
今回は時間の都合でブラックマドンナ内の博物館やカフェには行かれなかったのだけど、旅は心残りがあるくらいが丁度いいと言うじゃないですか。
また次に必ず来れるよう、TO DOを残しておきます。

とにかく街中全てが美術館かなってくらいアールヌーヴォーで美しいプラハ。
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世紀末の頃から破壊されずこれだけ美しい建物が残っているのは、あの独裁者がプラハの美しさをいたく気に入っていて、ナチス本部をプラハ城に置こうと思案していた過去があるから。
ウイーンで美大受験に失敗し芸術家になり損ね極右政治家になってからも、感性的な価値観に心を寄せていたヒットラーという人物のプロフィール(横顔)をまた少し見た気がしました。
これはそのプラハ城をカレル橋から撮影したもの。
ドナウ河がその美しさをさらに印象付けていた
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閑話休題、とにかく右を見ても左を見ても美しいプラハ。
そしてどこに行っても売られているマトリョーシカとクルテクグッズはもちろん自分へのお土産に購入。
私マトリョーシカ大好きなの!
外国生まれの祖母の家に昔からあって、その不思議な外見と入れ子構造になんとも心惹かれていて、今は少しずつコレクションを増やしています。
この時点で旅はようやく半分過ぎたくらいだったから荷物にならないよう2個しか買わなかったけど、可愛い子を連れて帰ることができて満足。
モグラのクルテクのマグカップも、プラハ駅内の観光案内所で最後の小銭消費の為に買ったら、街中のスーベニアショップより安く手に入りました。
他国に比べて元々物価が安く、このマグカップも高くないものなのに、老舗ポーセリンメーカーのものでカチッと焼けていて質が良い(陶器大好き人間なのでクオリティには一言あるタイプ)
帰国後は仕事の傍、私の横にいてひとときの癒しを与えてくれるクルテクカップ
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プラハ城へ向かう途中、疲れた足を休めるため聖ミクラーシュ教会へ入る。
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アールヌーボーもいいけど、やっぱりバロック最高よね〜〜〜〜となる。
ここはモーツァルトが弾いたオルガンがあることで有名なのだけど現在修復中で完全な姿で見ることはできなかった。
それでも一部が見れるということで二階に上がり近くで眺めていたら、教会関係者のおじいちゃま(ローカルの人)がスッと私に寄って来てなぜかイタリア語でオルガンの説明をしてくれて、美しい天井画とオルガンの写真のついた大きなポストカード(売りもの)をくれた。
フラ語の感覚でなんとなくおじいちゃまの説明も理解できたし、なにより遠いアジアから来たお客さんを手ぶらで帰さない優しさにほっこりと胸が温まった。
私は住んでいた頃から欧州人のシニアのおじさまおじいさまたち受けが良く、しばしこのような謎の歓待を受ける。

プラハ城は特に感想はないです笑
頂上へ着く頃にはあまりの人の多さと、坂の急さと、真夏の暑さでヘトヘトで何を見ても一事が万事同じ感想だった。
二週間に渡る欧州旅行、毎日2万歩以上歩き、体力もギリギリだった。

チェコといったら、カフカ。
チェコ語でカラスという意味もある、カフカ。
そういえばコルビジェもカラスだ。カラス人気。
プラハにはカフカの生家などもあり、博物館もある。
チェコ人のカフカがドイツ語で小説を書いていたのはやはり先述のチョビヒゲ独裁者による理由もあるのだが、なんにせよ今でも彼独特の世界観を持つ小説は世界中にファンがいるし、私もその一人だ。
以前「変身」をドイツ語で読もうとして断念した経験がある。日本語で読んでも彼の文章の中で迷子になる感覚がカフカの真骨頂と思うのだけど、原語で読むと、内容は読めるのに、いちいち混乱が拭えず前へ進めなかったからだ。

夕方涼しくなってからユダヤ人街に足を運んでみた。
そこには中身のない巨人に肩車される不思議なカフカ像が
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ユダヤ人街ってどこにいってもなんとも言えない空気感があるけども、プラハのもまた然り。
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西日が差し込むシナゴーグ横の小さな路地は、カフカの小説を可視化したような風景で、くねくねと不可思議でしっとりした光を携えとても魅力的だった。
小説「城」のように、いつまでたっても目的地にたどり着けなさそうな気分にさせられるユダヤ人街だった。
実際何時間もぐるぐると不案内なユダヤ人街をさまよってしまい、ホテルになかなか帰りつけなかったのだ。

電車に乗って美しい街プラハを後にし、最終目的地ウイーンへ向かいます。
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さよならプラハ、大好きになりました。
また必ず来るよ

Berlin,Weimar,Leipzig,Dresden,Prague, Vienna and Krems 2018 #4

Wednesday, August 22, 2018

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旅行記もやっと半分、ドレスデンまで来ました。
トップ画は王宮中庭の午前中の美しい光
欧州旅行記まだまだ先が長いというのに次のバカンスが決まってしまい、出発前に全部振り返られるか心配になってきました笑
本当に毎日忙しすぎて倒れそうなのだけど頑張らないとだわ。。

人生2度目のドレスデン。前回来たのはやはり十年以上前、ドイツに住んでいた頃。
その時は時間がなくて緑の丸天井まで行き着かなかったけど、今回は王宮目の前のケンピンスキーで一泊して、朝イチで並んで見ることができました。
ベルリンもケンピンスキーに泊まりたいのだけど、門の真横という立地、観光に不便でいつもウェスティンにしてしまう。

緑の丸天井を見た感想は、ひたすら感動。
撮影禁止なので何も載せられないけど、とにかく美しかったし、戦争で破壊された豪奢な部屋をよくあそこまで復元できたこと!
プロ撮影の絵葉書でも図録でも、あのスケール感や美しさは再現不可能で、どんな苦労をしてでも人生で一度は見て損はないと感じました。
圧巻の宝石コレクションも綺麗だったけど、私は幾何学的に掘られた象牙の置物や様々な大理石のオブジェがとても好きだったなぁ
とにかくどの部屋も素晴らしいの一言
オーディオガイドも料金に含まれていて、珍しく()日本語もあるという親切ぶり。(カタログも日本語版あった)
ドイツの観光地で日本語ガイドがあるなんて滅多にないことです。こんな瞬間にも現在の国際社会においての日本の存在感の薄さを実感させられてしまう悲しみ…

もちろん世界で一番有名な天使やホットチョコレートを運ぶ看板娘にも会いにアルテマイスター絵画館にも。
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十年前と違い展示室が大幅リニューアルされて、見やすいようなそうでもないような…前の方が壁面に迫力あって好きだったなぁ
絵と絵の間隔も狭くて、ただでさえ人が多いのにあまりゆっくり見られない仕様に変わっていたが、持っているものはやはり素晴らしい。
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ちなみにこの美術館の公式カタログも日本語版が売られています。
見たところ日本人観光客は少ないのに絶版にしないでいてくれてありがとうございます。。
かと言って中韓含むアジア人観光客が目立つかといったらそうでもないドレスデン。
買い物ができるでもなく、主要なドイツの都市からも遠い立地、ひたすら文化的遺産だけが観光資源、そこらへんが理由かしら

ツヴィンガー宮殿とかゼンパーオパーとかマイセンのタイルとか主要な観光地は今回は割愛。
その時間を使ってギネスに認定されたという「世界一美しい牛乳屋」へ
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中心地からトラムに乗り、え?ここ??って感じの住宅街の駅で下車。
本当にこんなところに〜?と思いながら少し歩くとひときわ人が沢山出入りしているお店が世界一美しい牛乳屋こと、ドレスドナーモルケライです。
本来は町の牛乳屋さんだものね。ロケーションに納得です。
店内では1ユーロくらい(うろおぼえ)で牛乳かブッターミルヒ(バターミルク。飲むヨーグルトみたいな味)を飲むことができます。
ここも店内撮禁なので写真なしですが、乳製品以外に、可愛い缶に入った牛乳石鹸やすごく美味しいミルクチョコなども買えます
このお店を知ったきっかけはカード会社の毎月送ってくる冊子に載っている世界のお土産みたいなコーナーで、まさにこの石鹸が掲載されていて、いつかドレスデンに訪れる際には行ってみたいと憧れていました
日本からドイツまでの長い長いフライト、何の映画を観ようかしらと思っていたら話題作でまだ観ていなかったグランドブダペストホテルがあったので見始めること17分目。
劇中よく登場するパティスリーMENDEL’Sの内装がコンマ何秒か映るのですが、まだ見ぬドレスドナーモルケライであることをその本当に短い瞬間に確信しました。
飛行機から降りたあと調べたらやはりビンゴで、自分の目の良さを再確認できたし、ご縁を感じて嬉しかった出来事
同行者はまだ行ってもいない場所が映画にコンマ数秒映ったのを私が言い当てたことにすごく驚いていました。
グランドブダペストホテルはおしゃれムービーとタカをくくって未視聴でしたが、テンポよく進むし絵作りも綺麗だし、ストーリーも良くて帰りの飛行機でも再度観たほど好きになってしまった笑

ドレスデン、前回もすごく天気が良くて青空が高くて、良いイメージのある街
やはり文化のある街は好きだなぁ。最高。
来るのが不便な場所だけど、また必ず再訪できますように

「ファーストラヴ」島本理生 装丁画

Saturday, July 21, 2018

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欧州旅行記がまだ完結していませんが、お仕事の告知を挟みます^^

高橋コレクションに入っている拙作油彩画「Madeleine」イメージを装丁にお貸ししました。
先日発表された直木賞も受賞され、素晴らしい作品が世に出るお手伝いができて光栄でした。
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Madeleineに関してはここDiaryでも度々触れているのですが、最近だと先日の清春村の美術館での展示の時に書いたもの
完成度が高く、自分でもとても気に入っている作品
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いつもマドレーヌちゃんと呼んでいます。
この時期の私の作品タイトルにはエステルとかクロリスとかフローラとか、だいたい全部女の子の名前をつけていて、我ながらそのセンスを大変気に入っていました。
エステルちゃんも先日とあるすごい作家さまの装丁のカバーガールになったのでまた近々diaryに書きにきますね

過去に「ぜひ橋爪さんの写真を使わせてください!うちの作家の新刊本イメージにピッタリです!!撮り下ろしなら(以下略)」という連絡をもらったこともあるのですが(苦笑)、ネットでファーストラヴの反応を見ていても割と写真と勘違いされがちですねー悲しい
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毎日コツコツこんな感じにパレット使って描いているのですよ
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制作の風景はたまにインスタグラムにアップしています

今回は文藝春秋さんとのやり取りの中で最終的にMadeleineの楕円フォーマットを活かした、展示壁面まで使用したデザインを上げていただき、今までにない仕上がりで絵画的な雰囲気を残せたと思ったのですが、それでもなかなか…
買った方、ぜひ帯を取って、カバー全体を眺めてみてくださいね^^
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Berlin,Weimar,Leipzig,Dresden,Prague, Vienna and Krems 2018 #3

Saturday, July 7, 2018

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忙しすぎてなかなか旅行記が進みません。。
気長に続けます^^

三年間ドイツに住んだけど、未踏の地ライプツィヒは素敵な街でした。
一般的にはやはり音楽の街のイメージですよね。
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何と言ってもバッハゆかりのトーマス教会。彼が長く音楽監督を務めたこの教会、かのマタイ受難曲の初演もあったとか。
マタイ受難曲………タルコフスキー「サクリファイス」!!!!
みんなに睡眠をもたらすことでおなじみな映画だけど、泣くほど私は好きな映画。
ここには有名なオルガンが二つあるけど、どちらもバッハが弾いたことはない、彼の死後に作られたもの。
お墓も拝んで来ましたよ。
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もう一つの観光の目玉、ニコライ教会。
ここから始まった東ドイツの平和革命でベルリンの壁が崩壊し、東西ドイツは統合、冷戦は終結へと。
今でも教会内にはöffnen für alle(open for all)と書かれています。全ての人のために、と。
シュロの木をかたどった列柱がピンクとグリーンの優しい色合いで素敵だった。ローマ・カトリック的な白!金!どや!!って感じの豪華絢爛大聖堂も綺麗だけど、祈りの場所としてはこういった穏やかで美しい教会もいいものです。(無宗教だけど)

5月末とはいえ暑かったドイツ。でも太陽が気持ちいいので地元のベーカリーLUKASでライプツィガーレアヒェという焼き菓子を買ってストリートのベンチで食べました。
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昔レアヒェ(ひばり)が禁猟になった際、その代わりに作り出されたお菓子らしく、このバッテンの塊は縄で縛られたひばりの姿を模したものという生々しいいわれも。
味は…マジパン風味、ちょっと苦手だった笑
中にちょこーんと女性の人差し指の爪くらいの赤いジャムが入っていたのだけど、それもひばりの心臓を表したイチゴジャムと聞いて脱帽。どこまで写実主義なの。さすがデューラーを生んだドイツ…
この生々しいエピソードがくるくるっと丸めて添えられて袋詰めされて売られている様子がとってもかわいかった
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春から初夏にかけてのドイツではお馴染みのいちごの家も久しぶりに見れた。キロ単位で売られているいちご、飛ぶように売れてベンチで休んでいる間にお店が閉まってしまうほど。
ドイツ人て男女共にゴツいのに、こういう意匠はやたらメルヒェンで可愛いの本当に不思議。
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先ほどライプツィヒといったら一般的には音楽、と書いたけど、美術家にとってはアートも熱い街。
私がドイツ留学中にはネオ・ラウホを中心としたライプツィガーシューラー(ライプツィヒスチューデント)が大盛り上がりの時期で、旧東独らしい陰気で人工的な悪い夢みたいな独特の世界観がニューヨークやヨーロッパの市場でもてはやされていました。
日本で人気の欧州のペインターといったら00年代初頭から未だに学生たちが揃って口にするピータードイグで止まってしまっているけど、欧米のマーケットではドイグはもはや過去の人すぎて、未だにライプツィガーシューラーすら輸入されてこない日本のアートの遅れぶりが顕著
だからこうしてたまにキャッチアップのため欧州に赴く必要があるのですよね。ネットや雑誌では全くわからない。そもそもアートは肉眼で見ないと意味半減ですし

そんなライプツィヒの現代美術の中心的美術館はマルクト広場すぐにあるライプツィヒ造形美術館MdbK。
ここでは去年亡くなった地元の作家アルノー・リンクの回顧展が観られました。
近年は画風が団体系の作家のようになってしまっていて、新しいものより過去作の方がやはり内容がよかった。
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この美術館、他にもコレクションがすごくって、作者不明だけど私の大好きな「愛の魔法」という絵が観れました!!
ここにあったんだ〜!感動
画集で見かけては憧れていた絵。
様々な寓意や表象にあふれているのだけど、一番好きなのは女性の履いているあまりにもおしゃれなサンダル!なんてかわいいんだ〜〜〜〜〜
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他にもお馴染みクラナッハなど、充実しています。
クラナッハのサイン本当にかっこいいな
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しかしこの美術館の裏の白眉はこれ。
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ベックリン「死の島」
死の島といえば、ヒトラーがベックリン信奉者でベルリンの彼の執務室に飾っていたシリーズ作品。
全部で5枚あるうちの、ヒトラー所有のは現在ベルリンの美術館にひっそりと飾られている。
そしてここライプツィヒにも一枚やはりひっそり黙って飾られていました。
いわくを知らずともすごく怖い絵だと思う。
精神にくる、良くも悪くも気持ちの悪い絵だった。
そう大きくないミドルサイズの作品なのに、心がぐらぐらくる鑑賞体験、観終わった後は混乱の余韻が残ります。
頭の中を整理できないまま絵から離れて振り返ったら美しい死神のような赤毛のおねえさんがじっと観入っていてその景色もまた死の島作品の一部のようだった。

MdbKは現代美術も力を入れているのでもちろんネオラウホのコレクションもたくさん観ることができたし、様々なアプローチの作品が観れるのでオススメです。
ガラス張りの建築もシンプルながら機能美でとても良い。美術品を収納する容れ物としてのアートである建築も、美術館を訪れる際の重要な鑑賞ポイント。
一階カフェ横に展示されていた、このスタンプで子宮の福笑いみたいなの作るプロジェクト面白かった
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ドレスデン編、いつになるかな、続きます!

Berlin,Weimar,Leipzig,Dresden,Prague,Vienna and Krems 2018 #2

Sunday, June 10, 2018

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2都市目はワイマール。
ここにはベルリン在住時に、エクスチェンジでバウハウス大学に来ていた芸大級友に遊びにおいでと言われて行ったことが一度あった。
その時に一通り観光もしたし、ブーヒェンバルド強制収容所にも行き強烈な体験もしている。
今回ドイツ→チェコ→オーストリアという旅程を考えた時、久々に寄ってみるかなと思い立ち、訪れることにした。

ベルリンからICEでエアフルトまで行き、そこからはレギオナールバン。
降り立つと相変わらず静かで小さな街。
一番の目的だったレジデンツシュロス内のクラナッハの大量の作品群はなんとその部分だけ閉鎖中で観ることができなかった。改修中というのだ。
七月末でお城全体も改修を始めるらしく、しばらく閉めるらしい。
改修前ということも手伝ってか、なんかさみしいお城の雰囲気。
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バッハもワイマールに23歳~32歳(1708~1717)の時宮廷音楽家として住んでいたのだけど、そんな音楽的側面もあってかレジデンツシュロス、つまり居住用のお城には割とたくさんのピアノが残されていた。
数多くのヨーロッパのお城を見たがこんなにピアノが置かれているお城は初めてというくらい各所にあったのが印象的。

ゲーテの先生だったヘルダーさんの銅像とヘルダー教会
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ワイマール市長だったクラナッハ、この街では色々な場所で関連のものが見れる。
ヘルダー教会内の見事な祭壇画。
しかしこれ以上近づけないため、ディティールを2.0の視力を駆使して眺めるしかなかった
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一番の街の中心地であるマルクト広場にはクラナッハハウス
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今は劇場になっているが、きちんと扉の上に「この家にルーカス・クラナッハが1552年から1553年10月16日に死ぬまで住んでいた」と書かれている。(わりと短い)
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このマルクト広場にあるホテル・エレファントはヒトラーが正面入口上のバルコニーで演説したことで有名だ。
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そんな歴史の舞台ともなったバルコニーだけど、今は可愛いらしい象のイラストつきで、改修中のお知らせのバナーが出てしまっている。
上に見える黒い板にはゲーテのファウスト内での一文「Hier bin ich Mensch,hier darf ich’s sein」と書かれている。
ワイマールを終の住処とし、死ぬまで住んだゲーテの生家が博物館になっていて見学できるのだが、そこにもこの言葉がフューチャーされていた。
訳すなら「私は人間としているからここにいてよい」といった感じ。人間として生きているから存在することが許される的な言葉遣い。

彼の本など読むたびに思うけどゲーテってぐうの音も出ないほどいつも正論をかましてくる。大天才なのがまざまざと伝わってくる。
私の好きな彼の言葉の一つは「母国語以外の言語を理解できない人間は、母国語について何もわかっていない」というもの。
本当にその通りなのだもの。

こんな感じでのんびり雨の中ワイマールを観光した。
今回は10年以上ぶりだったけど、また来ることはあるかしら笑
そういえば前に来た時も雨が降っていた。曇天と雨のイメージのワイマール、晴れ女の私にしては珍しい。あまり相性が良くないのでしょう。

次は初めて行く街ライプツィヒ!

Berlin,Weimar,Leipzig,Dresden,Prague, Vienna and Krems 2018 #1

Saturday, June 2, 2018

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二週間ほどドイツ方面へ。タイトル通りの順序で回ってきました。
ベルリンに戻るのは実に10年ぶりという…パリにはよく帰ってたけど、いかに私がベルリンから遠ざかっていたかわかる。

なんにせよ日本に帰国して久しく、また近年欧州のテロ等治安の悪化もあって機会をなかなか見つけられずにいたけど、忙しい合間を縫って無理やり時間を作って行ってきました。
長旅だったしなるべく淡々と記していきましょう。

最初の地、ベルリン。
テーゲル空港久しぶりすぎて忘れてたけど相変わらず小さい!
ベルリンに三つある空港は全て元軍用だからそもそも小さいのだけど、テーゲルは国際空港としては衝撃的な小ささ。故に日本からの直行便もなく今回も仕方なくフィンランドでトランジット。
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ホテルは利便性からウェスティンが好き。
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以前は朝食が豪華だったけど、ちょっとクオリティが落ちたなぁ。生野菜がトマトとキュウリしかなくて辛かったTT
エグゼクティブスイートにしたら広さはまずまず。

日本でテレビを見ていたらCMでたまたま見慣れた風景がほんの一瞬だが目に写り、即座に「あ、これ絶対にstadtmitteからのフリードリヒシュトラーセだ」と思って確認したら、ビンゴ。
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ホンダオデッセイのHPによるとベルリンの銀座と呼ばれている(初めて聞いた)フリードリヒ通りで撮影したとのこと。
定宿ウェスティンもこの通りにある。

着いた翌日は国会議事堂(ライヒスターク)へ。
住んでた頃は並べば見れたのだけど、最近は完全予約制に変わったのかな?当日行ってみると並んでいる人はいなかった。
日本から予約して行ったのでスムーズに中へ。
ナチズム等の反省から透明性の高い市民へ開かれた政治を標榜するドイツ政府のアイデンティティそのもののガラスのドームをオーディオガイドとともに鑑賞します。
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ドームは頂上まで歩いて上がれるようになっていて、まさに国会が行われる部屋の真上から世界中の一般の人たちが見下ろす仕組み。つまり国家の最高権力である議会を物理的に足下に見下ろすのです。
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極端だよなぁとも思うけど、それが敗戦国が大陸で生きていくための態度表明なのよね。
議事堂だけでなく、戦争やホロコースト系の遺産全てにおいてドイツのこう言った反省を前面に押し出しているアプローチを見ることができます。

議事堂に入るとすぐに両サイドにリヒター作品が。
アブストラクトのオイルは写真パネルになってて本物ではない。
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ドイツ国旗の三色のは質感は本物っぽかったけど、どうなのかな。
あまり知られてないけどドイツの国旗は黒・赤・金の三色でできている。(金ではなく黄色と勘違いしてる人が多い)
リヒター作品ではきちんと金に塗られている
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いつ見てもお世辞にもセンスのいい配色の国旗ではない。

三日目はベルリン中央駅から歩いてハンブルガーバンホフミュージアムへ。
中央駅周辺の変貌ぶりに一瞬戸惑う。
以前この近くに住んでいてよく見知ったエリアなのに、トラムの駅やら知らないバーやホテルが林立していた。

ハンブルガーバンホフミュージアムは私が住んでいた頃は一番大きな地下の展示室でフリックコレクションをやっていて、その量と質が驚異的だったのだけど、すっかり内容が変わり精彩を欠いていた。
企画展もイマイチ。
学芸員変わりましたか?
エントランス正面にある英語の作品にはクスリと笑わされましたが
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アイロニカルではあるけど、現在のアートマーケットの実情を考えると真理でもあり…多くのことが求められる時代です作家にも。
作家だけでなく、学芸員や批評家、ギャラリストにも当てはまることとも思うけども。

一階左翼の部屋には昔と変わらずボイス先生の巨大なワックス作品群と、黒板シリーズ、フェルトのスーツ。
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繰り返し先生が書いた大好きな言葉「Show Your Wound」
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そうだ、傷を見せろ。
表面的にアートぶってそれっぽいことして見せたり、一発芸のネタなんかじゃなく、傷を見せろ。
私も心底そう思っている。

次の日はゲメールデギャラリーへ。
ポツダマープラッツ駅から向かう。
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ここにはホルバイン、カラバッジョ、クラナッハの傑作群やフェルメールまであるのに、あまり知られていない。
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教科書に載っているネフェルチチの胸像がベルリンの新美術館にあることもほとんど知られていない。
宣伝が下手なのだ。
フランスみたいに自分のところが持っているものをもっと上手く世界に発信したら「貧しいけどセクシー」(ベルリン市長談)ではなくなれるのに

そのネフェルチチのある新美術館周辺の博物館島(ユネスコ世界遺産)の壁にも相変わらずすごい弾痕が残ったまま。
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この博物館島のあるベルリンの東側中心地(ミッテ地区)は戦争で最も被害を受けた街の一つで、前述の通り貧しさ故未だ街中のいたるところに弾痕がある。
探さずともアパートの外壁や橋なんかを見るとすぐに見つけることができる。
トップ画に置いた通称「ベルリンの虫歯」と呼ばれるカイザーヴィルヘルム教会は負の遺産としてあえて戦後の姿を遺してあるのだけど、初めて見たときはその退廃美に痛く感動した。
これを見るとベルリンに戻ってきたと実感する。
西側には用はないけど、これを見るためだけにツォー駅に赴いた。

西に来たついでに予定になかったが語学留学でベルリンに来た2003年の時ぶりにベルググリューンコレクションも観に行った。
隣のシャーフゲルステンベルグコレクションの方は初めて見たけど、シュルレアリスムの最高峰の作品がたくさんあって、中でもベルメールの写真群はすごい。歴史的価値の高いシリーズがそっくりそのままたくさんある。
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ここで観る人形の遊びシリーズはとても小さく、本当に小さく、そのスケール感がいつも画集で見ていたものと全く違って、やはり写真ですら生で鑑賞するとここまで差があるのだと再確認した。
以前Linien Str.のギャラリーで親戚筋から出たというやはり人形の遊びシリーズの写真が数点売られているのは見ていたが、ギャラリー内で見るのとまた印象が違った。
そして、しみじみとエルンストやベルメールは私の神だなぁと。

ワイマール編へ続く。

「トラベラー」展を観てきました

Monday, April 23, 2018

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二月のエントリーでこの展示に出品されているカリン・ザンダー女史作品に音声で参加していることはお伝え済みですが、先日ようやく観に行くことができました。

一言で言って感動!
帰国後日本で観た展覧会の中ではトップクラスの内容でした。

平日のお昼頃に行ったので空いており、ラウシェンバーグがドクメンタ4のために制作した「至点」(のちに国立国際が収蔵)という作品の中を通過して体験できる整理券をいただけたり、全作品心ゆくまで堪能。
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途中中抜けをして仲良しの新聞記者さまとランチに行ったのですが、その方も「そこらへんの国際展よりずっと国際展」と太鼓判を押すほどのクオリティーと参加者の面々です。
すでに一回行った人たちが口を揃えてもう一度行きたいと言っている理由がよーーくわかりました。
内容が良いからというのはもちろんですが、映像が多く、きちんと見ようと思ったら1日じゃ無理です笑
リピーター割引もあるので、これから行かれる方は二回に分けてもいいかもしれませんね。
なんにせよ開館40周年記念展でここまで攻めたロングランの現代美術展を敢行した国立国際さんには拍手喝采を送りたい。
現代アート慣れした私でも「そうきましたか」と驚いた展示方法など、実際足を運んで皆さまご確認下さいね。
繰り返しますが、この規模で、この内容の現代美術の展示を観れる機会は日本ではそう多くありません。アメリカやヨーロッパに行けば年中観られますが、それよりずっと安い交通費で観れるのですから、飛行機や新幹線に乗ってでも行く価値は十分あると思います。
このところずっと本物のアートが観たいと渇望していた私は、砂漠で水を得たような気持ちになりました。

「見せる:オーディオツアー」ですが、さすがザンダー女史、面白かった!
(撮影許可をもらって会場の中を撮っています)
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この作品プロジェクトはザンダー女史が欧州各地で発表したもので、11回目の今回、国立国際美術館に作品が所蔵されている現存の作家143名による音声作品が彼女の作品を形成しています。当たり前だけど錚々たる顔ぶれ!!
どんな表現方法でも良いから自分の作品を音声データ化して提出してほしい、という要請だったのだけど、普段よく観ている作家の方達がどういう音で自分の作品を表現しているのかワクワクしながら、壁に記された番号をオーディオガイドにプッシュ入力しました。
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オーディオガイドに入力する番号と四カ国語で記された名前
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オーディオガイドにもきちんと名前と音声作品タイトルが出ます。
私のタイトルは「What It Feels Like For a Girl」
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制作している時の音、独白、音楽、様々な形でみなさん表現されていましたが、森村泰昌さんの「芸術家の嘘」(だったかな?)がユーモアとアイロニーに満ちていて面白かった。
個人的に知っている人、作品だけを知っている人、皆さんやはりその作家性に沿った内容で、ふふっと顔がほころびます。

国立国際のひとつシンボリックな作品として高松次郎の「影」という常設作品があるのですが
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展示室に落ちる影がそれにそっくりで、小さな発見に嬉しくなりました
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この展示で一番魅入ったのはテリーサ・ハバード/アレクサンダー・ビルラーの「Flora」というスクリーン両面を使った映像作品。
フローラとはジャコメッティが一時期恋愛関係にあった無名のアメリカ人彫刻家の女性のことで、片面ではそのフローラの実子の老人のドキュメンタリー、もう片面では若き日のフローラとジャコメッティの恋愛時代を白黒でドラマ化した映像が流れています。
30分の映像を両方とも観て、部屋を出るとすぐに今映像で見たジャコメッティ作品や二人の写真などがあり、二重の驚きと感動が用意されていて、あまりの完成度に舌を巻きました。

アブラーモヴィッチのパフォーマンス映像も相変わらず素晴らしかった。
彼女自身がその豊かな髪に櫛を通しながら「Art must be beautiful, artist must be beautiful」と言い続けるのですが、だんだんとトーンが激しくなり、髪をとく様子も痛々しく暴力的になり、アートとは、美とは、と問いかけられているようです。
アブラーモヴィッチはヨーロッパにいると目にする機会も多く、文字通り体を張った女性性や身体性を打ち出したパフォーマンス作品にいつも敬意を感じていて好きなアーティストの一人。

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今回ポスターにもなっているアローラ&カルサディーラの「Lifespan」というパフォーマンス作品、パフォーマンス自体は私は見ることができなくて展示されていた冥王代の小さな石だけ見てきたのですが、本展オープニングでパフォーマンスを見てきた知人の感想にハッとさせられたので書き記そうと思います。

知人は全くアートと関係ない人間でたまたま誘われオープニングに出向き、パフォーマンスがあるというので見てみたら、三人の男女が天井から吊るされた小さな石をふーふーと吹きあっているだけで、後から思い出すとあまりにもその様子がおかしくて笑ってしまったんだとか。
そうなんですよね、アートってアートというフォーマットで見ればすごくかっこよかったり高尚に見えるのだけど、そんなの知るよしもない一般的な感覚で見ると相当おかしなことが超真顔で展開されているんですよね。
私たちアートの人間がありがたがって神妙な顔で鑑賞している美術作品の多くが、外から見ればなかなかにして滑稽で爆笑案件であるという大前提を思い出させてくれる出来事でした。

先日の毎日新聞での鼎談で「現代美術が、文脈から離れた人たちにとって難しく感じられるのは、作家たち側の問題」という話題が出たのですが、その通りと思います。
鑑賞されて初めて美術作品として生まれることができるのに、世の中の99.98%くらい(←かなり適当な数字です)いるであろうアートと関係のない人たちの理解を排除してドヤっている状況は往往にして疑問です。
美術作品として完成度が高く、また文脈を共有していない鑑賞者たちにも理解が難しくないということは並行して実現可能なはずです。
少なくとも私はそういった作品を作りたいといつも願っています。
日本の社会とアートの距離の遠さについて議論している中で出てきた話題だったのですが、欧州くらい成熟していれば話は別ですが、これからの世代はそう言った意味で失われた何十年かを取り戻し、文化後進国とも揶揄される日本の状況をベターにしていく必要を感じています。

何はともあれ、大阪に行くこと自体とても久しぶりだったし、展示は最高で会いたい人には会えて、充実した大阪滞在でした。
美術館のある中之島エリア、都会なのに静かで好き
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東京の都心ではもう見ることのできないレトロな喫茶店などが現役で営業していたり、どこかノスタルジックな雰囲気もあって、いつも仕事関係でくるからゆっくりできないけどいつか大阪をのんびり探訪したいなぁ

高橋コレクション 顔と抽象展

Saturday, March 24, 2018

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先日オープニングがあったので初めて清春芸術村にお邪魔して来ました。
穏やかな春の日で天気にも恵まれて絶好のショートトリップになりました^^
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ちょうど合田佐和子さんの作品を見たいと思っていたので高橋先生の素晴らしいコレクションで拝見できて嬉しかったなぁ。
いつか作品が手元に欲しいと思える作家さんの一人です。
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私は今回は「Madeleine」を出品していただいています。落合多武さんの素敵なドローイングのお隣。そして合田さんのお近く♪
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「Madeleine」は自分でもとても気に入っている作品で、再会できるたびに嬉しい。
2013年にパリに帰郷した際、友人に連れられて行く先々にマドレーヌ(マグダラのマリア)の聖遺物や関連のものに出会ったので、日本に帰国後そのご縁を形に残そうと描いた作品です。
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マグダラのマリアを意味するスカルを携えた若い女性、お菓子のマドレーヌのような楕円形のパネル(それに呼応するような女性とスカルのオーバルな輪郭)、美味しそうなきつね色のやはりお菓子のマドレーヌを想起させる背景色など、二重三重にマドレーヌの意味をかけました。
手を描くのって本当に複雑で骨折りなのだけど、この作品ではとても綺麗に描けています。柔らかい髪の毛や、肌、唇の質感も良く描けているので観に行かれる方ぜひ注目してみてください。

マリアマグダレーナとかマドレーヌってヨーロッパの女の子にわりといる名前だけど、やはりキリスト教世界の国だし本人たちはあまり自分の名前を好きじゃないみたい。娼婦であることを否定する説もあるけど、やはりその名前を与えられた女の子たちは気になる模様。
文脈から切り離されたファーイーストの人間には魅力的な名前に思えるのだけどね。

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ランチは清春芸術村から歩いてすぐのおそばの有名店で。
田舎蕎麦のざる美味しかった〜!お蕎麦大好き。お店の雰囲気も最高。

桜もだいぶ咲き始め、すっかり春ですねぇ
今朝は真っ白で大きくてふわっふわのうさぎが夢に出てきました。あんまりにキュートで夢の中の私がちゅーを迫るほど笑
ベルリンの大学では春になると茶色い穴ウサギが子供を連れてアトリエに遊びに来ていました。都会のど真ん中の公園内に油絵科のキャンパスがあったのだけど、あまりに自然に周囲にウサギがいる様子にヨゼフ・ボイスが茶色い野ウサギをよくモチーフにしていたことに深く納得したものです。

あーーーーーヨーロッパが恋しい。帰りたい!!(涙)
ハンブルガーバンホフミュージアムやゲメールデギャラリーに行って本物のアートと触れたい。
旅に出たい。異邦人になりたい。

最後に清春村のルオー礼拝堂のステンドグラスの下の解放された扉の奥の風景がスーラー絵画のような写真を置いておきます
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毎日新聞 絹谷賞特別対談

Tuesday, March 13, 2018

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昨日の毎日新聞朝刊に第十回絹谷幸二賞特別対談の記事が掲載されました。
ウェブでも読めますので、ぜひどうぞ。
紙面のPDFもこちらのページ内リンクから見ることができます^^

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今回第十回を持って絹谷賞は終わるということで、ご縁も深かった賞の最後を見届けたく昨日は授与式にも参加させていただきました。
感謝の気持ちが第一、しかし寂寥感も少々。
私自身は幸運にも作家一本で生活できていますが、それはこのような賞を受けたりと、たくさんの方の応援があったからに他なりません。
その中でも受賞後も東京はもちろん、京都や大阪、そして箱根での展覧会にも必ず毎日新聞さんは取材に来て記事を書いてくださって、絹谷先生もスピーチでおっしゃっていましたが本当に足を向けて眠ることができません!笑

三年間多摩美で教えた中であまりにたくさんの学生が絵を描いて暮らしたい、作家になりたいと言うので驚いたのですが、私が学生だった時よりはるかに美術家志望の若者は増えていると実感しています。
しかしそれに反比例するように、その若い才能を認め世に出す契機となる美術賞は減少傾向です。
絵画はまだそれでも恵まれている方ですが、インスタレーションなどを評価する大型の美術賞もまだまだ足りない状態です。
もちろん、芸術家は誰もがなれるものではなく、奇跡的に色々な要因や環境が揃って初めて才能が開花します。なので誰彼構わず支援すればいいとも思わないのですが、今の日本の、とりわけアーティストを育てる環境にはまだまだ余地があるようです。

対談で桑久保徹さんもおっしゃっていましたが、絹谷賞の受賞作家は非常に公正に選ばれ、レベルは高く、個展やグループ展での展示全体に対する賞なので、単発の作品だけでの評価の場合そもすれば取りこぼされる才能も拾い上げることができます。
まるでミシュラン調査員のようにいつの間にか展覧会に選考員がやって来ていて(私は高階秀爾先生のご推薦でした)、ある日突然毎日新聞社さんからノミネートを告げる連絡を受けるのですが、そういった意味でも賞へ向けた対策や衒いのない純粋な芸術活動そのものに対する評価であることが、特出した素晴らしい点でした。
将来10人の絹谷賞受賞者がなにかしらその名前の元に展覧会を開催し、改めて本賞の意義を見せることができる日を待ち望んでいます。
そして美術賞を含む、より多くの芸術家育成や支援の担い手が現れ永続して運営されることを願ってやみません。
先日懐かしい写真を発掘したので、最後に載せておきます♡

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「トラベラー まだ見ぬ地を踏むために」@国立国際美術館 など

Saturday, February 17, 2018

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現在国立国際美術館にて開催中の「トラベラー」展にて、カリンザンダー女史の作品に音声で参加をしています^^
「見せる:オーディオツアー」という彼女が2005年から手がけているプロジェクトを今回は大阪で展開するにあたり、国立国際美術館に作品が所蔵されれている作家たちが自分の作品を音で表現し、約2分間の音声データで彼女のインスタレーション作品の一部を構成します。
音で自分の作品を表現したことが全くなかったのですが、面白い機会なのでなんとか作ってみました。
まだ実際の展示には足を運べていないのですが、どんな感じになっているのかな
ザンダー女史は、私がベルリンで通っていた大学の教授で、直接習ったことはないけれど、友人は彼女の生徒だったりで今回作品に参加できたことがとてもうれしい。

カタログを入手したのですが、めちゃくちゃ面白そう!!
国内外のスター揃いで、なかなかこれだけのかっこいい展示が日本で見られる機会も少なさそうだから是非皆様も行って見てくださいね。
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さて、話は変わりますが連日オリンピックでたくさんの試合が開催されていて私も絵を描きながらテレビから音などを流して楽しんでいます。
昨日フィギュア会場から聞き馴染みのあるイントロが聴こえてきたと思ったら、Gwen Stefaniの「the Sweet Escape」でした。
グウェンは私が中学生の頃からずーっと憧れていた歌手で、昔はオレンジカウンティの歌がやたらと上手なスカバンドのヴォーカルだったのが、ソロで大成功して、ファッションセンスなども手伝いトップセレブになってしましました。
NO DOUBT時代からずっと好きで好きで、ソロももちろん素晴らしくて夢中になって聴いていたのだけど、その中でもやはりAkonと一緒に作ったthe Sweet Escapeは00年代を代表する名曲だと思います。
テイラースウィフトがShake it off出した時「ああ、テイラーってグウェンステファニ好きなんだ」と直感的に感じたのだけど、調べたらやはりコンサートで「the Sweet Escape」のカヴァーをしていました^^これはこれでよいなぁ
2006年の曲で、私がドイツにいた頃よくMTVで流れていたけど、今聴いても全然古びていないどころか、むしろ新しい。
グウェンの曲はノーダウト時代から歌詞も本当に好きです。
the Sweet Escapeでも可愛げがあるんだかないんだか、弱々しく女々しく男の人にすがる女性ではなく、「ずっとあなたにひどくしてきたことを謝らなくちゃいけないわ」と言った次のリリックで「私が床にぶちまけた腐ったミルクみたいに振る舞った理由は、あなたのせい。あなたが冷蔵庫を閉めておかなかったから。」とそこまで反省の色がない。
「もしエスケープできたらそこに私の世界を作るわ。そこではあなたのお気に入りの女の子になってパーフェクトに一緒になれる。ねえそれってスイートじゃない?」と現実でうまくいかなかった関係を空想の世界ではベターにしたい健気さもありながら
「あなたが私から去って行って欲しくないし、あなたを一緒に連れて行きたい」と自分の希望もちゃんと伝える。
「take me with you(連れてって)」ではなく、「take you with me(連れて行く)」なところがグウェンなのです。
youtube見てたらカサビアンが歌詞を男性目線に置き換えて歌っているのを見たのだけど、そうしたら驚くほどに普通の歌詞になってしまいました。笑
冷たくして、ずっとバッドボーイでごめんね。君が冷蔵庫を閉めないから床に腐ったミルクをぶちまけたみたいになったよ。もし逃げ出せたら僕だけの世界を作って、きみと完璧に結ばれる などなど、過去に散々ダメなロック男子が女の子に捨てられそうになっているシチュエーションの歌詞として聞き飽きていたそのもので!笑
呼びかける相手をBoyからGirlに変えるだけでこんなにも意味性が変わってしまうなんて!と、改めてグウェンが歌うことによってフレッシュであった事実が実感できました。

実は先述のザンダー女史のインスタレーションに参加した際に、私が作った音声データの一部にマドンナの言葉を日本語に自分で訳して使ったのだけど、マドンナ同様グウェンも私が素敵と感じる女性像に近い。
世代的に言えばよっぽどグウェンの方が身近に感じることができる分、思い入れもあります。
考えてみれば私はポップ・ミュージックのアーティストからも多大に影響を受けているのだなぁとオリンピックきっかけで再確認できた一件でした。

いつか憧れのグウェンと会うことができますように。

画集「Beautiful Stranger」について

Monday, January 15, 2018

現在、ようやくアマゾンにて正規の値段(税込4,104円)で新品が買えるようになっております。
ポーラ美術館でも売り切れてしまい、様々な場所で欠品が続き一部中古品が高騰していましたが、ぜひこの機会に新品を買い求めください。

個展「This isn’t Happiness」ステートメント全文

Sunday, March 26, 2017

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This isn’t Happiness

2015年の春から大学で教鞭を執るようになったのだが、あまりに多くの学生が絵描きになりたい・アーティストになりたいと口にするので驚いている。

油画科で教えているので当然といえば当然だし、わたし自身が東京芸大の同科を修了してペインターをやっているのだから言わばその最右翼かもしれないが、思い起こしても若い学生時分、正直一度も絵描きを目指したことがなかったからだ。周りにも作家志望はそこまで多くなかった。
わたしが識っている中で長い西洋美術史をさかのぼっても秀逸な作家になればなるほど幸福なペインターはそう多くない。有史以来、幸せに満ち満ちている作家の作品は大抵おもしろくない。いつも何か物足りなさやら焦燥感やら孤独感やら、その他多くのネガティブな観念に囚われているからこそ、その作家や作品が鑑賞者の深い部分に刺さるのであり、つまりはアーティストという運命的職業が必ずしも幸せとは思えないのだ。
描きたいからではなく描かなければいけないから描いているうちにアーティストになってしまったわたしは、たくさんの若者がそんな美術作家に憧れを持つ現状を、微笑ましかったり少し不安に思ったりしながらも、彼らより少し前を走っている存在として可能な限りのサポートをしている。

与えて与えて与えることが作家の人生だ。
それは幸福ではないが、不幸とも思っていない。

本展にあたり用意した作品は従来と変わらず物故作家の有名作品をアップデートする「After Image」シリーズに類することが可能だ。引用元のマグリットであったりゴッホであったり、幸福に満ちあふれた人生を送ったとはお世辞にも言えない作家をチョイスしたことから、このような個展名を名付けるに至った。

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