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Monday, January 7, 2019

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新しい年が明けましたが、去年10月に行った何十年ぶりかのNYの旅行記を。

ローティーンの頃に行ったきり機会に恵まれなかったNYですが、ミヅマの新しいスペースがオープンするということでお祝いに駆けつけました。

欧州やアジアであれば勝手知ったるといった感じだけど、久しぶりのアメリカ本土、しかもNY。
行く前妙にナーバスになってしまい、欧州在住の友人に「NYアウェー感がすごい」とラインしたところ、「わかるわ〜〜」と、共感を得た笑
12時間かかるパリよりさらに何時間も遠くて、物理的にも精神的にもアウェーなNY

実際JFK空港着いてすぐ、アウェー感は現実となって私を襲うことになります。
ラゲージアウトで荷物を待っていたところ、目の前に私のリモワちゃんが流れて来るあと2mというところで、メガネのアジア人男性(非日本人)がそれを掠め取り、サーッと移動して行くではないですか。
慌てて「ねえ、私の荷物だよ!」と英語で言いながら追いかけると、その男は一瞬ちらっと振り返り、何も言わず荷物をその場に置いて小走りでいなくなった。
自分のカバンと間違えてたという様子でもなく、私は着いて早々全てを失うところだった。。早速アウェーの洗礼です。

気を取り直し、タクシーでホテルへ向かう。
土地勘も何もない一人旅なので、知人からの推薦もあってミッドタウンにある某姉妹で有名なホテルを今回のお宿に選んだのだけど、これが後々の悲劇を生みます笑

当日夜は現地金融で働くアメリカ人の友人がノマドホテルでのディナーを予約してくれていたので、ドレス着て、シャネルのピアスつけて、ジミーチュウのブーツ履いて、ジバンシーのバッグ持って、つまりおめかしをして出かけた。
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オシャレでご飯が美味しいと有名な予約が取れない星付きレストランと聞いていたからワクワクしながら行ったけど、感想はいたって普通…他の日本人のレビューを読んでも辛口評価。
看板メニューのフォアグラはくどいばかりで残してしまった。スイーツも甘すぎて以下同文。ワインはめちゃ高いボトルを頼んだから、美味しかった(当たり前)
インテリアも欧州の重厚で歴史あるものと比較してしまえば、ハリボテ感満載で安っぽく感じた。
なかなか座れないらしい、暖炉のあるお部屋の暖炉の横の席だったのだけど、その偽暖炉には偽のろうそくが豆電球でゆらゆら演出されていた。
星のついているレストランでもこんな感じかぁと、アメリカの食事の質を改めて思い知らされた初日の夜。
でもお店を用意してくれた友人には感謝でいっぱいだし、おしゃべりしながらのディナーはもちろん楽しかった。その後タイムズスクエア周辺を二人で散歩して歩いたのもとても気持ちが良かった。

エンパイアステートビルディングはハロウィン仕様のオレンジ色のライトアップ
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2日目は終日予定がなかったから一人で美術館巡りとお買い物。
MOMAは最高だった。なにがって、コレクションが!
マグリットの「恋人たち」もここにある。
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ホイットニーも、グッゲンハイムも、展示がかなりつまらなかった。これにはとてもがっかりした。
アートの本場であるなら、こちらが腰が抜けるほどすごいショーを見せつけて欲しかった。
なんか、景気の悪い国の展示みたいに退屈だった。

グッゲンハイムで展示を見終わってエントランス付近にいた時、来たばかりという感じのアメリカ人のおじいさんに「ねえ、見る価値ある?25ドル払う価値あった?」と話しかけられたので「正直、ないと思います」と言ってしまった笑
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グラウンド・ゼロはさすがにモニュメントとして素晴らしかった。
モニュメントはドイツ語でDenkmal(デンクマール)という。denk(考える)mal(一度)、つまり一度考えるという意味がある。
denkをdenkenという動詞の命令形と考えれば「再考しろ」とも捉えられる。
ドイツの近代史と結びつけて思い起こしては、よくできた言葉だなぁといつも感心する

ご遺族の方のものなのか、所々お花がこうして名前の上に刺さっていた
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今回NYに行くにあたり絶対に行きたかったお店がありました。
それはJohn Derianのお店。
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5月にいったベルリンではキューンケラミックで念願のカップやら陶器のトランプやらを買うことができたが、ここでも3枚ほどインテリア用のお皿を購入。

これは薔薇から生まれた薔薇太郎。きゃわいい。
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トランプ模様に弱い私
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目のお皿はアスティエ・ド・ヴィラットとジョン・デリアンのコラボレーション。奥に見えるのは、氏の買い集めたペーパーのコレクションを掲載した画集 @自宅のリビング
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三日目。夕方からお邪魔したミヅマのグランドオープニングは盛況でした
オープニング展をしている天野喜孝さんや、篠原有司男さんにもお会いできて嬉しかったです♡
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ところで某姉妹で有名な今回のホテルの件ですが、何が悲劇だったかと言いますと、通されたお部屋に問題がありました。
お部屋自体はモダンで、無加工でも今にもちょっとしたロマンチックホラー始まりそうないい雰囲気だったのだけど。
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高層階のエレベーターから離れたほぼ一番奥の部屋だったのですが、着いた時から24時間ずーっと黒スーツで強面のガタイのいいアジア人のおじさんが常時2人以上、多い時で8人、私の部屋の扉の横(つまり廊下)に椅子を置いて待機していたのです。
なにこれ全くリラックスできない笑
夜中だろうと朝方だろうと話し声が私の部屋にも響き、出入りのたびにジロジロ見られ、辛抱堪らなくなったある日の夜中とうとう「いい加減静かにしてっ!今何時だと思ってるの!!」と怒ってしまった。ソーリーソーリーと少し申し訳なさそうにして、その日は静かになったのですが、相変わらず24時間体制でおじさんたちが部屋の横にいる状態は変わらず。
私はてっきり、その廊下のどんつきにあるペントハウス(私の隣の部屋)に中国の会社でも入っていて、おじさんたちはその従業員で、外で時間を潰していると思い込んでいたのですが、アメリカ人の友人に事情を話すと驚いて様子を見にきてくれて「フロントに相談するべきだ」と。
どうやらペントハウスにはどこかのアジアの国の政治家が泊まっていて、黒服たちはSPだった模様。
銃を持っていたかもしれない彼らに、それとは知らず怒った私の命知らずさったら・・・中国旅行客だらけのホテルだったから、なんなら旅行代理店のおじさんたちだとばかり笑(超のんき)
一応高級ホテルなのに一人旅の女性客をこんなプライバシーのない部屋に通すなんて、と友人がフロントに部屋の交換を掛け合ってくれたのだけど、同じグレードに空き部屋がないから無理の一点張り。4泊で20万円以上支払っているのにずいぶんな対応で、怒った友人は今すぐチェックアウトしてうちにおいでと言ってくれて、返金対応など全て交渉も済ませてくれたおかげで、無事に最後の夜を過ごすことができました。
本件の対応に当たったサブマネージャーはマネージャーは不在とばかり言い、アーリーチェックアウトはできないと繰り返すばかりだったけど、某姉妹で有名なホテルの本部に電話したら、ミッドタウン店の非礼を詫び、サブマネージャーの再教育を約束し、アーリーチェックアウトもホテルの規定上何も問題ない、必ず返金すると言ってくれて、やはりきちんと責任者と話をするのって大事なことと再確認。

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ハワイとカルフォルニアの記憶しか鮮明でない私にとってアメリカってもっとおおらかで楽しいイメージだったのだけど、今回のNYでかなり印象が変わったなぁ。
文化的な側面で言えば魅力があまりなく、あくまで経済の街。それ以上の何ものでもなかった。
現地に住むアーティストの友人曰く、最近どこも展覧会がつまらないそう。勢いを失いつつあるNY。
物やお店は大抵なんでもあった。日本には来る気配もないパリのお店なども、ローカライズしてガンガン出店していた。まさに、資本の場所。
パリの大好きなジェラード屋のアモリノは、ここNYでは大味で巨大でもはや薔薇の形を失い、店員がしつこくさらにマカロンを載せることをオススメして来た。(パリのアモリノ、私が知る限りそんなハイカロリーカスタマイズはない。)
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大都会とも思わなかった。洗練には遠く、ごちゃごちゃしている。
草間さんの本では日本はアメリカに30年遅れていると書かれていたけど、今のNYならそうは全く感じなかった。
ニューヨーカーは都会人らしいといえばそうなのだろうけど、せっかちで横柄に思えた。

何より歴史がなくて、全てにおいて物足りなかった。
そこがアメリカの強みでもあるのだろうけど、例えばアート一つ取っても、お金の力で集めて来た欧州の美術品以外のアメリカンアートは良くも悪くもペラペラだった。
欧州時代も感じていたが、アメリカ人にとってアメリカは世界の中心であり、すべてで、他国への関心が非常に薄い。よそを知らなくて困ることもないからだろうし、周りも知らないからその状態に疑問を持つこともない。
日本はいつも心に鎖国を…みたいなところあるけど、外の世界に目を向けている人がたくさんいるし、文化もたくさん入って来ている。敬意も持っている。
それはとても素晴らしいこと。
NYはどれだけすごいところなんだろう、最高のアートや文化があって私を打ちのめしてくれるに違いない、と極東の東女はお上りさん然とドキドキして乗り込んだのですが、ナーバスになる必要はどこにもありませんでした。
それならやはり去年ドイツ方面を回って帰国した時の方が、しばらく自分が何をしたらいいのかわからなくなるほど、新旧本物のアートに己の若輩ぶりを思い知らされて打ちのめされていた。帰国の途に着く飛行機内で何度も「帰ったら何を描いたらいいかわからない」と同行者に漏らしたほどだ。
NYやっぱりすごい〜!大好き!私もがんばろっ☆ってなる予定で行ったのに、肩透かしを食らった。

しかしNYが経済の街である限りアートも運命共同体。現在アートを志す全ての人間においてファイナルディスティネーションであることに変わりはありません。
なんだかんだ書いたけど、きっとまたすぐに行くと思います♡
最後に、まるでマグリットがミッドタウンの街角に彼の作品モチーフを置き忘れたかのような光景を残して、主観に満ち偏った視座からとなってしまった旅行記を締めたいと思います。
見事な蝙蝠傘、時空を超えてマグリットの足跡を見たような気分になった
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