新作について

Saturday, September 12, 2020

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東京から巡回してただいま大阪の高島屋本店六階美術画廊にてMetropolis2020展に作品を出品しています
新作のle coiffeurはいわゆる髪結いをテーマにした西洋画の伝統モチーフを現代的解釈で描いた作品で会心の出来です
自分でもとても気に入っています
他にも未発表の新作を二点展示しているのでぜひ関西圏の方お越しくださいね
カタログも配布しており無料でもらえます
そちらのカタログに展示に寄せて短い文章を書いているので本作品と展示テーマの関係性について知りたい方は読んでみてください
こちらの文章もお気に入り

単純な図柄のようで今回も一枚描き上げるのにほぼ四ヶ月かかりました
アートは多様であってよいと考えていますが私には今のどんどん消費され時にフリーのデザイン素材のような軽さで扱われていく芸術は向いていないと実感する近年です
どうしたって早描きはできない内容だし3、4ヶ月毎日向き合う作品に自分が疑問や飽きを感じたら完成させることができないため必ずいいものになると確信したイメージしか着手することもできません

本当に大変なんです作品を完成させるということは
時々気が狂いそうになります
人気のあるテーマを少し変えて何枚も描けば欲しい方はいるでしょうし私も楽でしょう
でもそれだと私が作品を完成させるところまで緊張感を維持できないし作品のクオリティも保証できません
私が毎回違う絵を描く理由です

様々な作家がいますが私は私にしかなれません
今後も自分が納得いくまで向き合った作品を発表していきたい

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「トラベラー」展を観てきました

Monday, April 23, 2018

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二月のエントリーでこの展示に出品されているカリン・ザンダー女史作品に音声で参加していることはお伝え済みですが、先日ようやく観に行くことができました。

一言で言って感動!
帰国後日本で観た展覧会の中ではトップクラスの内容でした。

平日のお昼頃に行ったので空いており、ラウシェンバーグがドクメンタ4のために制作した「至点」(のちに国立国際が収蔵)という作品の中を通過して体験できる整理券をいただけたり、全作品心ゆくまで堪能。
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途中中抜けをして仲良しの新聞記者さまとランチに行ったのですが、その方も「そこらへんの国際展よりずっと国際展」と太鼓判を押すほどのクオリティーと参加者の面々です。
すでに一回行った人たちが口を揃えてもう一度行きたいと言っている理由がよーーくわかりました。
内容が良いからというのはもちろんですが、映像が多く、きちんと見ようと思ったら1日じゃ無理です笑
リピーター割引もあるので、これから行かれる方は二回に分けてもいいかもしれませんね。
なんにせよ開館40周年記念展でここまで攻めたロングランの現代美術展を敢行した国立国際さんには拍手喝采を送りたい。
現代アート慣れした私でも「そうきましたか」と驚いた展示方法など、実際足を運んで皆さまご確認下さいね。
繰り返しますが、この規模で、この内容の現代美術の展示を観れる機会は日本ではそう多くありません。アメリカやヨーロッパに行けば年中観られますが、それよりずっと安い交通費で観れるのですから、飛行機や新幹線に乗ってでも行く価値は十分あると思います。
このところずっと本物のアートが観たいと渇望していた私は、砂漠で水を得たような気持ちになりました。

「見せる:オーディオツアー」ですが、さすがザンダー女史、面白かった!
(撮影許可をもらって会場の中を撮っています)
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この作品プロジェクトはザンダー女史が欧州各地で発表したもので、11回目の今回、国立国際美術館に作品が所蔵されている現存の作家143名による音声作品が彼女の作品を形成しています。当たり前だけど錚々たる顔ぶれ!!
どんな表現方法でも良いから自分の作品を音声データ化して提出してほしい、という要請だったのだけど、普段よく観ている作家の方達がどういう音で自分の作品を表現しているのかワクワクしながら、壁に記された番号をオーディオガイドにプッシュ入力しました。
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オーディオガイドに入力する番号と四カ国語で記された名前
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オーディオガイドにもきちんと名前と音声作品タイトルが出ます。
私のタイトルは「What It Feels Like For a Girl」
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制作している時の音、独白、音楽、様々な形でみなさん表現されていましたが、森村泰昌さんの「芸術家の嘘」(だったかな?)がユーモアとアイロニーに満ちていて面白かった。
個人的に知っている人、作品だけを知っている人、皆さんやはりその作家性に沿った内容で、ふふっと顔がほころびます。

国立国際のひとつシンボリックな作品として高松次郎の「影」という常設作品があるのですが
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展示室に落ちる影がそれにそっくりで、小さな発見に嬉しくなりました
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この展示で一番魅入ったのはテリーサ・ハバード/アレクサンダー・ビルラーの「Flora」というスクリーン両面を使った映像作品。
フローラとはジャコメッティが一時期恋愛関係にあった無名のアメリカ人彫刻家の女性のことで、片面ではそのフローラの実子の老人のドキュメンタリー、もう片面では若き日のフローラとジャコメッティの恋愛時代を白黒でドラマ化した映像が流れています。
30分の映像を両方とも観て、部屋を出るとすぐに今映像で見たジャコメッティ作品や二人の写真などがあり、二重の驚きと感動が用意されていて、あまりの完成度に舌を巻きました。

アブラーモヴィッチのパフォーマンス映像も相変わらず素晴らしかった。
彼女自身がその豊かな髪に櫛を通しながら「Art must be beautiful, artist must be beautiful」と言い続けるのですが、だんだんとトーンが激しくなり、髪をとく様子も痛々しく暴力的になり、アートとは、美とは、と問いかけられているようです。
アブラーモヴィッチはヨーロッパにいると目にする機会も多く、文字通り体を張った女性性や身体性を打ち出したパフォーマンス作品にいつも敬意を感じていて好きなアーティストの一人。

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今回ポスターにもなっているアローラ&カルサディーラの「Lifespan」というパフォーマンス作品、パフォーマンス自体は私は見ることができなくて展示されていた冥王代の小さな石だけ見てきたのですが、本展オープニングでパフォーマンスを見てきた知人の感想にハッとさせられたので書き記そうと思います。

知人は全くアートと関係ない人間でたまたま誘われオープニングに出向き、パフォーマンスがあるというので見てみたら、三人の男女が天井から吊るされた小さな石をふーふーと吹きあっているだけで、後から思い出すとあまりにもその様子がおかしくて笑ってしまったんだとか。
そうなんですよね、アートってアートというフォーマットで見ればすごくかっこよかったり高尚に見えるのだけど、そんなの知るよしもない一般的な感覚で見ると相当おかしなことが超真顔で展開されているんですよね。
私たちアートの人間がありがたがって神妙な顔で鑑賞している美術作品の多くが、外から見ればなかなかにして滑稽で爆笑案件であるという大前提を思い出させてくれる出来事でした。

先日の毎日新聞での鼎談で「現代美術が、文脈から離れた人たちにとって難しく感じられるのは、作家たち側の問題」という話題が出たのですが、その通りと思います。
鑑賞されて初めて美術作品として生まれることができるのに、世の中の99.98%くらい(←かなり適当な数字です)いるであろうアートと関係のない人たちの理解を排除してドヤっている状況は往往にして疑問です。
美術作品として完成度が高く、また文脈を共有していない鑑賞者たちにも理解が難しくないということは並行して実現可能なはずです。
少なくとも私はそういった作品を作りたいといつも願っています。
日本の社会とアートの距離の遠さについて議論している中で出てきた話題だったのですが、欧州くらい成熟していれば話は別ですが、これからの世代はそう言った意味で失われた何十年かを取り戻し、文化後進国とも揶揄される日本の状況をベターにしていく必要を感じています。

何はともあれ、大阪に行くこと自体とても久しぶりだったし、展示は最高で会いたい人には会えて、充実した大阪滞在でした。
美術館のある中之島エリア、都会なのに静かで好き
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東京の都心ではもう見ることのできないレトロな喫茶店などが現役で営業していたり、どこかノスタルジックな雰囲気もあって、いつも仕事関係でくるからゆっくりできないけどいつか大阪をのんびり探訪したいなぁ

高橋コレクション 顔と抽象展

Saturday, March 24, 2018

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先日オープニングがあったので初めて清春芸術村にお邪魔して来ました。
穏やかな春の日で天気にも恵まれて絶好のショートトリップになりました^^
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ちょうど合田佐和子さんの作品を見たいと思っていたので高橋先生の素晴らしいコレクションで拝見できて嬉しかったなぁ。
いつか作品が手元に欲しいと思える作家さんの一人です。
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私は今回は「Madeleine」を出品していただいています。落合多武さんの素敵なドローイングのお隣。そして合田さんのお近く♪
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「Madeleine」は自分でもとても気に入っている作品で、再会できるたびに嬉しい。
2013年にパリに帰郷した際、友人に連れられて行く先々にマドレーヌ(マグダラのマリア)の聖遺物や関連のものに出会ったので、日本に帰国後そのご縁を形に残そうと描いた作品です。
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マグダラのマリアを意味するスカルを携えた若い女性、お菓子のマドレーヌのような楕円形のパネル(それに呼応するような女性とスカルのオーバルな輪郭)、美味しそうなきつね色のやはりお菓子のマドレーヌを想起させる背景色など、二重三重にマドレーヌの意味をかけました。
手を描くのって本当に複雑で骨折りなのだけど、この作品ではとても綺麗に描けています。柔らかい髪の毛や、肌、唇の質感も良く描けているので観に行かれる方ぜひ注目してみてください。

マリアマグダレーナとかマドレーヌってヨーロッパの女の子にわりといる名前だけど、やはりキリスト教世界の国だし本人たちはあまり自分の名前を好きじゃないみたい。娼婦であることを否定する説もあるけど、やはりその名前を与えられた女の子たちは気になる模様。
文脈から切り離されたファーイーストの人間には魅力的な名前に思えるのだけどね。

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ランチは清春芸術村から歩いてすぐのおそばの有名店で。
田舎蕎麦のざる美味しかった〜!お蕎麦大好き。お店の雰囲気も最高。

桜もだいぶ咲き始め、すっかり春ですねぇ
今朝は真っ白で大きくてふわっふわのうさぎが夢に出てきました。あんまりにキュートで夢の中の私がちゅーを迫るほど笑
ベルリンの大学では春になると茶色い穴ウサギが子供を連れてアトリエに遊びに来ていました。都会のど真ん中の公園内に油絵科のキャンパスがあったのだけど、あまりに自然に周囲にウサギがいる様子にヨゼフ・ボイスが茶色い野ウサギをよくモチーフにしていたことに深く納得したものです。

あーーーーーヨーロッパが恋しい。帰りたい!!(涙)
ハンブルガーバンホフミュージアムやゲメールデギャラリーに行って本物のアートと触れたい。
旅に出たい。異邦人になりたい。

最後に清春村のルオー礼拝堂のステンドグラスの下の解放された扉の奥の風景がスーラー絵画のような写真を置いておきます
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「トラベラー まだ見ぬ地を踏むために」@国立国際美術館 など

Saturday, February 17, 2018

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現在国立国際美術館にて開催中の「トラベラー」展にて、カリンザンダー女史の作品に音声で参加をしています^^
「見せる:オーディオツアー」という彼女が2005年から手がけているプロジェクトを今回は大阪で展開するにあたり、国立国際美術館に作品が所蔵されれている作家たちが自分の作品を音で表現し、約2分間の音声データで彼女のインスタレーション作品の一部を構成します。
音で自分の作品を表現したことが全くなかったのですが、面白い機会なのでなんとか作ってみました。
まだ実際の展示には足を運べていないのですが、どんな感じになっているのかな
ザンダー女史は、私がベルリンで通っていた大学の教授で、直接習ったことはないけれど、友人は彼女の生徒だったりで今回作品に参加できたことがとてもうれしい。

カタログを入手したのですが、めちゃくちゃ面白そう!!
国内外のスター揃いで、なかなかこれだけのかっこいい展示が日本で見られる機会も少なさそうだから是非皆様も行って見てくださいね。
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さて、話は変わりますが連日オリンピックでたくさんの試合が開催されていて私も絵を描きながらテレビから音などを流して楽しんでいます。
昨日フィギュア会場から聞き馴染みのあるイントロが聴こえてきたと思ったら、Gwen Stefaniの「the Sweet Escape」でした。
グウェンは私が中学生の頃からずーっと憧れていた歌手で、昔はオレンジカウンティの歌がやたらと上手なスカバンドのヴォーカルだったのが、ソロで大成功して、ファッションセンスなども手伝いトップセレブになってしましました。
NO DOUBT時代からずっと好きで好きで、ソロももちろん素晴らしくて夢中になって聴いていたのだけど、その中でもやはりAkonと一緒に作ったthe Sweet Escapeは00年代を代表する名曲だと思います。
テイラースウィフトがShake it off出した時「ああ、テイラーってグウェンステファニ好きなんだ」と直感的に感じたのだけど、調べたらやはりコンサートで「the Sweet Escape」のカヴァーをしていました^^これはこれでよいなぁ
2006年の曲で、私がドイツにいた頃よくMTVで流れていたけど、今聴いても全然古びていないどころか、むしろ新しい。
グウェンの曲はノーダウト時代から歌詞も本当に好きです。
the Sweet Escapeでも可愛げがあるんだかないんだか、弱々しく女々しく男の人にすがる女性ではなく、「ずっとあなたにひどくしてきたことを謝らなくちゃいけないわ」と言った次のリリックで「私が床にぶちまけた腐ったミルクみたいに振る舞った理由は、あなたのせい。あなたが冷蔵庫を閉めておかなかったから。」とそこまで反省の色がない。
「もしエスケープできたらそこに私の世界を作るわ。そこではあなたのお気に入りの女の子になってパーフェクトに一緒になれる。ねえそれってスイートじゃない?」と現実でうまくいかなかった関係を空想の世界ではベターにしたい健気さもありながら
「あなたが私から去って行って欲しくないし、あなたを一緒に連れて行きたい」と自分の希望もちゃんと伝える。
「take me with you(連れてって)」ではなく、「take you with me(連れて行く)」なところがグウェンなのです。
youtube見てたらカサビアンが歌詞を男性目線に置き換えて歌っているのを見たのだけど、そうしたら驚くほどに普通の歌詞になってしまいました。笑
冷たくして、ずっとバッドボーイでごめんね。君が冷蔵庫を閉めないから床に腐ったミルクをぶちまけたみたいになったよ。もし逃げ出せたら僕だけの世界を作って、きみと完璧に結ばれる などなど、過去に散々ダメなロック男子が女の子に捨てられそうになっているシチュエーションの歌詞として聞き飽きていたそのもので!笑
呼びかける相手をBoyからGirlに変えるだけでこんなにも意味性が変わってしまうなんて!と、改めてグウェンが歌うことによってフレッシュであった事実が実感できました。

実は先述のザンダー女史のインスタレーションに参加した際に、私が作った音声データの一部にマドンナの言葉を日本語に自分で訳して使ったのだけど、マドンナ同様グウェンも私が素敵と感じる女性像に近い。
世代的に言えばよっぽどグウェンの方が身近に感じることができる分、思い入れもあります。
考えてみれば私はポップ・ミュージックのアーティストからも多大に影響を受けているのだなぁとオリンピックきっかけで再確認できた一件でした。

いつか憧れのグウェンと会うことができますように。

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