「トラベラー まだ見ぬ地を踏むために」@国立国際美術館 など

Saturday, February 17, 2018

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現在国立国際美術館にて開催中の「トラベラー」展にて、カリンザンダー女史の作品に音声で参加をしています^^
「見せる:オーディオツアー」という彼女が2005年から手がけているプロジェクトを今回は大阪で展開するにあたり、国立国際美術館に作品が所蔵されれている作家たちが自分の作品を音で表現し、約2分間の音声データで彼女のインスタレーション作品の一部を構成します。
音で自分の作品を表現したことが全くなかったのですが、面白い機会なのでなんとか作ってみました。
まだ実際の展示には足を運べていないのですが、どんな感じになっているのかな
ザンダー女史は、私がベルリンで通っていた大学の教授で、直接習ったことはないけれど、友人は彼女の生徒だったりで今回作品に参加できたことがとてもうれしい。

カタログを入手したのですが、めちゃくちゃ面白そう!!
国内外のスター揃いで、なかなかこれだけのかっこいい展示が日本で見られる機会も少なさそうだから是非皆様も行って見てくださいね。
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さて、話は変わりますが連日オリンピックでたくさんの試合が開催されていて私も絵を描きながらテレビから音などを流して楽しんでいます。
昨日フィギュア会場から聞き馴染みのあるイントロが聴こえてきたと思ったら、Gwen Stefaniの「the Sweet Escape」でした。
グウェンは私が中学生の頃からずーっと憧れていた歌手で、昔はオレンジカウンティの歌がやたらと上手なスカバンドのヴォーカルだったのが、ソロで大成功して、ファッションセンスなども手伝いトップセレブになってしましました。
NO DOUBT時代からずっと好きで好きで、ソロももちろん素晴らしくて夢中になって聴いていたのだけど、その中でもやはりAkonと一緒に作ったthe Sweet Escapeは00年代を代表する名曲だと思います。
テイラースウィフトがShake it off出した時「ああ、テイラーってグウェンステファニ好きなんだ」と直感的に感じたのだけど、調べたらやはりコンサートで「the Sweet Escape」のカヴァーをしていました^^これはこれでよいなぁ
2006年の曲で、私がドイツにいた頃よくMTVで流れていたけど、今聴いても全然古びていないどころか、むしろ新しい。
グウェンの曲はノーダウト時代から歌詞も本当に好きです。
the Sweet Escapeでも可愛げがあるんだかないんだか、弱々しく女々しく男の人にすがる女性ではなく、「ずっとあなたにひどくしてきたことを謝らなくちゃいけないわ」と言った次のリリックで「私が床にぶちまけた腐ったミルクみたいに振る舞った理由は、あなたのせい。あなたが冷蔵庫を閉めておかなかったから。」とそこまで反省の色がない。
「もしエスケープできたらそこに私の世界を作るわ。そこではあなたのお気に入りの女の子になってパーフェクトに一緒になれる。ねえそれってスイートじゃない?」と現実でうまくいかなかった関係を空想の世界ではベターにしたい健気さもありながら
「あなたが私から去って行って欲しくないし、あなたを一緒に連れて行きたい」と自分の希望もちゃんと伝える。
「take me with you(連れてって)」ではなく、「take you with me(連れて行く)」なところがグウェンなのです。
youtube見てたらカサビアンが歌詞を男性目線に置き換えて歌っているのを見たのだけど、そうしたら驚くほどに普通の歌詞になってしまいました。笑
冷たくして、ずっとバッドボーイでごめんね。君が冷蔵庫を閉めないから床に腐ったミルクをぶちまけたみたいになったよ。もし逃げ出せたら僕だけの世界を作って、きみと完璧に結ばれる などなど、過去に散々ダメなロック男子が女の子に捨てられそうになっているシチュエーションの歌詞として聞き飽きていたそのもので!笑
呼びかける相手をBoyからGirlに変えるだけでこんなにも意味性が変わってしまうなんて!と、改めてグウェンが歌うことによってフレッシュであった事実が実感できました。

実は先述のザンダー女史のインスタレーションに参加した際に、私が作った音声データの一部にマドンナの言葉を日本語に自分で訳して使ったのだけど、マドンナ同様グウェンも私が素敵と感じる女性像に近い。
世代的に言えばよっぽどグウェンの方が身近に感じることができる分、思い入れもあります。
考えてみれば私はポップ・ミュージックのアーティストからも多大に影響を受けているのだなぁとオリンピックきっかけで再確認できた一件でした。

いつか憧れのグウェンと会うことができますように。

「アルテーミスの采配」文庫本装丁

Saturday, February 3, 2018

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もうじき幻冬舎さんから発売される「アルテーミスの采配」の文庫本装丁に「Toilettes des filles」の作品画像が採用されています。
画像をお貸しするにあたり幻冬舎さんからゲラと単行本をお送り頂き読ませていただいたのですが、本当に面白くて、寝る前と電車の中で夢中になって読んでしまいました笑
さすがイヤミスの女王真梨幸子さま!
普段あまり読まないジャンルの小説でしたが、新しい読書の世界を開いていただけました♡とっても感謝です。
装丁デザインの全貌は本屋さんで直接手にとって見てくださね^^

単行本版では水野暁さんの「Tangential Line」という油彩画が装丁に選ばれていたのですが、なんとその作品は、去年私も「Toilettes des filles 2」を出品した「日本の写実 そっくりの魔力」展(北海道立函館美術館・豊橋美術博物館・奈良県立美術館)に出品されていたのです!
偶然ながらご縁だなぁと、送られて来た単行本を見て感じたのでした。

装丁画に選んでいただくことって本当にうれしいことです。
絵を描くのも命がけだけど、きっと小説を書くことも同様に命がけでしょうし、その大事な作品の表紙に選んでいただくことって何よりも光栄なことと感じているからです。
東京芸大大学院時代、初めて装丁画をやらせていただいた島田雅彦氏「美しい魂」以来度々こういう機会をいただけていますが、今後もこういった素敵な小説との出会いがたくさんありますように!
そしていつかこのように一緒にお仕事をさせていただいた方と実際お会いして色々お話ししてみたいという密かな夢もあります笑
考えてみれば島田さんと高階先生以外はお会いしたことないんですもの。

うちのアトリエ本当に笑えないくらい寒くてとうとう今年はホットカーペットを導入したのだけど、寒さに負けず新作を二枚同時進行で描いています。笑えないくらい身体中が痛い。頭も背中も肩も、寝ても覚めても痛い。。
描いてみたい作品がいつもいっぱいで、手も時間も足りない。毎日最低十時間は描いてるけど少しずつしか進まなくて歯がゆい。絵を描くのは手や腕ではなく肩と脚のフットワークだから座ってたら良い絵なんか描けない、故に一日中立ちっぱなしなので本当に寒いと余計に体にくる。
でも冬の後に春が必ず来るように、一筆ずつ進めていけばいつか気づいたら完成してるものなのですよね。
南国が恋しいなぁ。もう冬服飽きたし薄い生地のワンピース一枚でふわふわ街を歩きたい。そういうお洋服に似合うバッグはやっぱりクロエかミウミウ。ああ、早くシンガポールかジャカルタに行きたい!もしくは南半球、オーストラリアに行きたい。とにかくリゾートワンピが着たいしそれでお出かけがしたい!!!暖かいところでのお仕事待っています。
オーチャードのマーク&スペンサーで買ったグリーンティー&レモン(お気に入り)を飲みながら午後のお仕事を始めましょう。
来月、ちょっとスペシャルな対談があるのでまたお知らせしに来ますね^^

画集「Beautiful Stranger」について

Monday, January 15, 2018

現在、ようやくアマゾンにて正規の値段(税込4,104円)で新品が買えるようになっております。
ポーラ美術館でも売り切れてしまい、様々な場所で欠品が続き一部中古品が高騰していましたが、ぜひこの機会に新品を買い求めください。

個展「This isn’t Happiness」ステートメント全文

Sunday, March 26, 2017

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This isn’t Happiness

2015年の春から大学で教鞭を執るようになったのだが、あまりに多くの学生が絵描きになりたい・アーティストになりたいと口にするので驚いている。

油画科で教えているので当然といえば当然だし、わたし自身が東京芸大の同科を修了してペインターをやっているのだから言わばその最右翼かもしれないが、思い起こしても若い学生時分、正直一度も絵描きを目指したことがなかったからだ。周りにも作家志望はそこまで多くなかった。
わたしが識っている中で長い西洋美術史をさかのぼっても秀逸な作家になればなるほど幸福なペインターはそう多くない。有史以来、幸せに満ち満ちている作家の作品は大抵おもしろくない。いつも何か物足りなさやら焦燥感やら孤独感やら、その他多くのネガティブな観念に囚われているからこそ、その作家や作品が鑑賞者の深い部分に刺さるのであり、つまりはアーティストという運命的職業が必ずしも幸せとは思えないのだ。
描きたいからではなく描かなければいけないから描いているうちにアーティストになってしまったわたしは、たくさんの若者がそんな美術作家に憧れを持つ現状を、微笑ましかったり少し不安に思ったりしながらも、彼らより少し前を走っている存在として可能な限りのサポートをしている。

与えて与えて与えることが作家の人生だ。
それは幸福ではないが、不幸とも思っていない。

本展にあたり用意した作品は従来と変わらず物故作家の有名作品をアップデートする「After Image」シリーズに類することが可能だ。引用元のマグリットであったりゴッホであったり、幸福に満ちあふれた人生を送ったとはお世辞にも言えない作家をチョイスしたことから、このような個展名を名付けるに至った。

2011年のフローラ

Friday, March 11, 2016

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この絵のタイトルである「Flora」はギリシャ神話の女神の名前から由来する。元はクロリス(Chloris)という妖精だったが風の神ゼファーの愛を受け、花の女神フローラへと変身を遂げた女性だ。この作品はボッチチェリの代表作「春(La Primavera)」の右半分で展開される場面を現代的意匠でアップデートした作品である。
私はかねてから絵画の中で中世ヨーロッパの女性たちのお腹が膨らんでいることが興味深かった。当時の女性たちは皆一様にふくよかに描かれているが、それにしても腹部だけ異様に膨らんでいる。洋服のデザインのようだが、私には彼女たちが妊婦のように見えてならなかった。
2011年3月初旬、日本に帰国して初めての個展を控え、展示のメインである作品「Girls Start the Riot」を仕上げた私は残った短い時間でなにかもう一枚作品を描きたかった。オイルを描く時間はなかったから鉛筆で紙に描こうと思い、そこでふとボッチチェリのフローラを下敷きにしようと思い浮かんだ。フローラの持つストーリー自体がとても女性性が強く、平素フェミニンな切り口から作品を作る私の興味を強く引いたし、当時30歳になったばかりだった私もようやく自分の体内(胎内)にもう一つの生命を宿すことに対するリアリティーが湧き始めていたからだ。
ドイツで買った花柄のハイウエストのワンピースを着て、腹には綿を詰め、自らをモデルにして私はフローラに扮し絵画の中の彼女と同じポーズをとった。以前子どもを産みたての女性が手にその赤ん坊を抱いて全裸で壁の前に立つ写真を見たことのがあるのだが、彼女の内股には一条の血が稲妻のように走っていた。私はその写真に強烈な印象を受けて、出産ができる性の力強さの象徴のように感じ、妊婦フローラにも出血を描いた。妊娠と出血がパラレルで起きている絵になったがそれは流産を意味するわけではなく、あくまで強靭な生(性)を可視化した結果であり、絵画作品としての表現である。
描いている間に3月11日がやってきた。日常が崩壊した。その日はFlora(Study)に手を入れる気にはとてもなれなかった。
次の日から再び鉛筆を握った。電気が不足しているとのことから、アトリエの照明は最小限にしぼった。そのせいか出来上がった Flora(Study)は明度が低く、人物のプロポーションがおかしい。現代文明を享受し慣れ親しんだ煌煌と明るいアトリエから離れるとこうも作品の様相が違ってしまうものかと戸惑った。
2011年4月からの個展でFlora(Study)を発表後、私は同じものをオイルで描くことに決めた。こういう時だったからこそ女性のもう一つの生命を創り出せるという能力が尊く、何よりも必要なことに思えた。鉛筆より、より恒久性の高いオイルで作品を残す必要性があった。
後にChlorisという作品も派生的に描いた。こちらは出産する力強い女性というより、やはり元のストーリーに寄り添った、神に見初められ愛された女性の官能美がモチーフとなった作品だ。

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