short book review 002

Thursday, March 8, 2012

enjo
最近仕事ばかりでダイアリーのネタになるようなことも少なく、寒いから素敵な靴を履くチャンスも少ないので久々に読書について触れます。

先日、円城塔氏の芥川賞受賞作「道化師の蝶」を夢中になって読破しました。
彼は形骸的な日本文学に飽き飽きで遠ざかっていた私を最初のたった二行で虜に!
難解という意見も多いけど、私にはむしろ脳内スクリーンにクリアに映像が照射される気持ちよさ。まだ日本語にこんな文字列の可能性があったのね、という新鮮な感動がそこにありました。今までのどの日本文学にもなかった空間性が行間に浮遊しています。未踏のものを読み進める快楽で頭がいっぱいになります。
この方はひょっとするとひょっとするかもしれません。
惚れてしまいそう!私はこういうインテリ感丸出しの人に大変弱い。
インタビューなど読むと、やはりというか氏は安部公房のファンだということが分かり、元々物理学を専攻していたことなどによりSF的要素も多分に小説にしたためられています。四角四面に文学文学していなくてとても良い。
同時に私が惹かれた大きな理由として言語論にも深く根ざした小説であることが挙げられるでしょう。
最近めっきり腕は落ちましたが、私は日本語以外に一応ドイツ語・英語・フランス語(得意な順です)を理解します。私のようなマルチランゲージの人間にとって多国籍感がありつつ、言語に対して深い思索が随所に現れている「道化師の蝶」はその複雑なパズルのさばき方にどこか共感を抱きやすいです。
「誰が書いたものか特定されない小説にしたい」と円城氏が語るように書き手の押さえ気味の主体性にアノニマス感がでているあたりがどこか翻訳された外国文学のようで、日本で書かれた小説に思えないなぁと読んでいる最中感じていたら、やはりアメリカに滞在中に書かれた小説でした。納得。
「これはペンです」など魅力的なタイトルの他の作品もぜひ読みたい。
まちがいなく彼は現代日本文学界にあられたニューヒーロー!まだまだ若いし、国際的に大きな評価を受けるのは絶対に時間の問題です!!

もう一方の超話題作家田中慎弥氏の芥川賞作「共喰い」は前者と好対照なほどティピカルでクラシカルな文学然としたたたずまい。
性・暴力・血統の苦しみ・離脱不可能な田舎町・生々しい方言…中上健次をどうしても想起させるけど彼ほどの濃さや宿命もなく、刷新感ゼロ。前時代的にもほどがある。ただ日本文学にほとんど馴染みがなく、しかし読書が嫌いでない人は十分に面白く感じるでしょう。
序盤の冗長で退屈な伏線描写が最後そうなるのね、って構成は見所です。
終盤の描写のスピード感はなかなかだけど、最後の一行はたまらなく蛇足的。山田詠美氏の「息子に生理用品の心配される筋合いはねぇ!」という選評に深く深く共感します。
最終投票で田中氏に一票投じた都知事閣下はこれにて審査員を退役とのこと、誠にご英断だと存じます。
後任の2名に大いなる期待をいたしましょう。
しかし話題性だけでこの小説を読んだ人たちはいったいどういった感想を抱いたのでしょうか。
普段文学に触れない人たちがこの機会に手に取ったという事実は何よりも素晴らしいのですが、よくも悪くもちっともキャッチーな小説じゃないし、いかんせん古臭く泥臭いので、これが最新で最も評価を受けるべき現代日本文学だと勘違いされては残念です。

私が読書をするタイミングはだいたい入浴中と夜寝る前だけなのですが、読書灯だけの寝室の暗闇にまったく適していない本をつい最近読みました。
宮崎勤の「夢のなか」。死刑囚本人による著作です。
しかもこの本を読み始めたその日の夜、数ヶ月ぶりに地震警報が真夜中にけたたましく鳴り、本の内容も相まって酷く怖い思いをしてしまいました!
その内容についてはあまり触れないでおきます。
レビューを書くようなものでもないと思うので。
私もものを作る人間として創作に対しては自分の考えをいくらでも展開できるのですが、ノンフィクションの場合クリティックを差し挟む余地は私にはありません。
ましてやそこに何のてらいもなく淡々と綴る精神破綻をした人間がいる場合、ひたすら傍観者を決め込むしかなく、ただその異様な姿態を遠巻きながらも観察し、一人の人間の業に思いめぐらすことが私なりの関わり方だったりするのです。

読書は私の永遠の情熱であることは間違いなく、好き勝手レビューを書くのはひたすら楽しい。
もっとこの手のエントリー増やして、いつかチャンスがあればこの読書好きを生かした仕事もできれば嬉しいなぁ。
時間があったら私が影響を受けた本などもこれから紹介していくことにしましょう。

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