rest in peace,dear Louise

Wednesday, June 2, 2010

d0083194_5143619 ルイーズ・ブルジョワが亡くなった。 98歳。 フランス生まれの彼女はすばらしい彫刻家だった。数年前のベネチアで最高齢で賞をもらった事も本当にすごい事だった。 彼女の作品の主核は「痛み」だったそうだが、確かに彼女の作品を見るたびにひりひりと私の心も痛みを共有したものだ。彼女について書かれた多くの本より彼女の人生は辛苦の多いものであったと容易に知る事ができる。 彼女のいろいろなメディアを使った彫刻作品もすばらしかったが、平面作家の私はやはりドローイングに惹かれるものがあった。手数も少なく、色彩も最小限のドローイングたちは、彼女が、ひいては女性が内包する不安感や獣性を強烈に訴えた。ポンピドーセンターにもコレクションがいくつもあり、現在もelles@pompidouにて見る事ができる。 生半可なフェミニズム論などがふっとぶような、彼女にしか表現できない女性性を常にエスタブリッシュされたスタイルで提示していた。 私は彼女の作品の前に立つと、閉じ込めていた自分の孤独感や秘密が急に露呈したような気分になり、じっと動けなくなりながらも目をそらしたくなる。 画集も欲しかったけど手元においていつでも見れる状態にする事が、自分の古傷をえぐる作業に思えて結局一冊も持っていない。 日本では六本木ヒルズのシンボルとしてのmotherという蜘蛛の巨大彫刻が一番知られているだろう。このメス蜘蛛はおなかの中にマーブルでできた卵をいくつか孕んでいる。 彼女は結婚して子供を産んでからも、作家として成熟できた希有な存在だ。 多くの女性アーティストが伴侶を得て、子供を持つと作家としての鋭さを失って行く中で、彼女はむしろさらに女性という性を深く掘り下げる事に成功し、すばらしい作品を作り続けた。 本当に尊敬します。 自分もそうでありたいと心から願います。 辛い半生だっただろうが、女性が生涯現役の一流作家でいられる事を体現してくれたブルジョワに感謝の気持ちを込めつつご冥福をお祈りいたします。 フランスには彼女のようにたまにとんでもない女性性をもった人物がいる。タイプは違うが、マルグリット・デュラスにしてもそうだ。平素女らしいと評される私でも(自分では全くニュートラルに振る舞っているつもりですが)、デュラスの小説を初めて読んだときはその女っぷりに「か…勝てない。。。」と心底敬服したものです。 そういえば昔エマニュエル・べアールが主演した映画で「フランスの女」というのがあったけど、この際観てみようかしら。 さてここからは余談だけど、ヒルズの蜘蛛、実はけっこう厄介な存在だったりする。 というのも、話によると、蜘蛛というのは風水上不吉な生き物で、それがやはり風水上最悪な位置にヒルズでは置かれてしまっているらしい。 だからこの彫刻の目の前で、子供が回転扉に挟まれる事件が起きたり、ヒルズに会社を構える大企業が次々と撤退を余儀なくされるような事がおこっているのだそうだ。数年前のホリエモンの逮捕劇しかり… アートがただのオブジェクトではなく、環境にも大きく影響する力を持ち、支配する存在であることを知らされる。(しかしこの場合は決してブルジョワが邪悪なものを作った、という意味ではない。アートとはそれだけインフルエンシャルな存在であるという事だ。) いつかギャラリストの三潴氏が「毒にも薬にもならないものを作っても意味がない」といった内容の事を話されていたのを今でもよく覚えている。 本当にその通りだと思う。

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